面倒な買い物を手軽にするデフォルトの設定
ネットショッピングのデフォルト
コンピュータ関連で「デフォルト」といえば、初期設定のことをいいます。例えば、購入直後のスマートフォンにデフォルトでおすすめのアプリが並んでいたり、通知が推奨の状態にされていたりします。最近では、ネットショッピングでもデフォルトが設定されていることがあります。特に商品の要件や設定をいろいろ決める必要がある商品について、販売業者が標準的な消費者を想定した組み合わせを提示することがあります。
視線のカスケード現象
デフォルトが設定されると、消費者の行動はどう変わるのでしょうか。人がどこを見ているかを計測するアイトラッカーを使用して、購入時の視線の動きを調べます。人は購入する商品を選ぶ際に、最終的に商品を決めたと確信する約1秒ほど前から、選ぶものを注視する傾向が知られています。このように決めたという感覚より視線のほうが先に動く現象を、視線のカスケード現象と呼びます。例えば、スマートフォンの購入時に2つの保険が提示されているケースでは、一方の保険がおすすめとしてデフォルトに設定されている場合には明確な視線のカスケード現象が現れませんが、デフォルトの設定が無い場合には視線のカスケード現象が現れます。おすすめが既に選ばれているので、そこに乗ってしまえば、保険を選ぶという決断は不要という心理が読み取れます。
選び疲れを軽減する
選ぶということは、楽しく素晴らしいことです。一方で、選ぶコトは心に負担を強いてもいます。何か1つを選ぶことで、選ばなかったものの方が良かったと後悔するかもしれません。インターネットを使うことで情報を山のように手に入れ、自分の好みを追い求めることができる現在は、選択の機会が増え過ぎ、後悔する恐れも多くなるなど選ぶことに疲れることもあります。デフォルトを適切に設定することにより、消費者は手軽に便利で、ほどほどに満足できる購入ができるのです。ただし、デフォルトを悪用すれば消費者を騙すことにも使えます。適切にデフォルトを設定することが重要なのです。
参考資料
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神戸女子大学 心理学部 心理学科 教授 秋山 学 先生
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