地域の公共交通としての乗り合いタクシー
公共交通の存続
生活の移動手段として、公共交通はなくてはならない存在です。特に、高齢化が進んだ地域では、車以外の移動手段として公共交通の重要性が増しています。その一方で、乗降客数の減少による収入減により、鉄道やバスなどの既存路線の見直し・廃止が進んでいます。かといって、車への依存が高くなれば、高齢者の運転による事故の増加が心配です。そのため、各地域において公共交通を維持することが大きな課題になっています。
タクシーを公共交通として考える
もちろん、利用者の数に見合わないまま運行し続けていては、鉄道やバスの経営が成り立ちません。そこで模索されているのが、公共交通としてのタクシー利用です。これまでは、道路運送法において、タクシーは1回の運送について1つの運送契約が結ばれることが原則でした。つまり、同じ方向に行くからといって、2人の客が相乗りして別々に料金を支払うことはできなかったのです。しかし、タクシーの利用料金を抑えて公共交通として成立させるためには相乗りが必要であるため、2021年にタクシーの相乗りサービス制度が導入されました。また、公共交通と同等な料金を実現させるために、現在は行政から税金による支援も行われていますが、住民が利用するショッピングセンターや病院に協力を仰ぐことも考えられます。状況に適した移動手段を計画し、それを経済的に成り立たせて持続させることが重要です。
持続可能な街を作るために
また、交通の観点だけで地域の生活を持続可能にできるわけではありません。例えば、買い物なら通信販売や移動販売といった別の手段も普及させるなど、複合的な解決方法を模索することが重要です。新たな公共交通を導入しても、利用者が少なければ経営は成り立ちません。車を運転できて自分の移動には不便を感じていない人も含めて、すべての住民が「誰もが安心・安全に暮らせる街」を目ざしながら、持続可能な街をつくるために自発的な行動を起こすことが求められています。
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先生情報 / 大学情報
福山市立大学 都市経営学部 都市経営学科 教授 渡邉 一成 先生
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