家族が直面する問題を理解し援助するための家族心理学
家族全体を対象として扱う心理学
現代社会においては、家族の中で、虐待など子育ての問題、DVなど夫婦関係の問題、うつや不登校など心の健康の問題など、さまざまな問題が起こっています。そうした家族内で起こる問題や親子関係や夫婦関係について、心理学的に研究し、問題解決のための援助方法を探る学問が、「家族心理学」です。家族心理学は、世界各国で30年ほど前から始まった、心理学の中でも比較的新しい分野です。社会全体が急速に変化し、人々の価値観が多様化するにつれ、家族のあり方も大きく変化しています。そして、悩みを抱える家族が増加してきたため、個人だけを対象にしてカウンセリングや援助をするのではなく、家族全体を視野に入れた理解と援助が必要になり、家族心理学が必要とされるようになりました。
犯人探しではなく、問題の解決を考える
家族心理学に基づく家族カウンセリングは、基本的に夫婦や親子、あるいは家族全員と面会して行います。通常私たちは、家族の中で何か問題が生じると、「誰が悪いのか」と原因追及や犯人探しをしがちですが、家族カウンセリングでは、誰と誰がどのように関わっていて「悪循環」が生じているかに注目し、家族の関係が変化することで問題が解決されると考えます。また、家族は学校や職場など、より大きな社会集団にも影響を受けているので、それらとの関係も無視できません。家族の誰かを悪者にするのではなく、対話を通して家族がお互いをより深く理解し合い、親密な関係を築いていくのを援助していきます。
問題や危機を乗り越えることによる成長
家族は、独身時代から新婚期を経て、子どもが生まれ、成長し、思春期を迎え、やがて巣立つというような、ライフサイクルの各段階で、さまざまな危機に直面します。しかし、危機とは危険+機会の意味があり、危機を乗り越えることで人はさらに成長します。家族心理学は、個人として、そして家族としての成長や幸福に貢献することをめざす心理学であり、今後ますますその重要性は高まるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
明治学院大学 心理学部 心理学科 教授 野末 武義 先生
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