成長期の栄養がアスリートの体をつくる
プロ選手によって浸透したスポーツ栄養学
「スポーツ栄養学」という言葉は、1990年代後半から注目されるようになりました。その背景には、野球やサッカーなど、日本人のプロスポーツ選手やオリンピック選手が海外で活躍するようになったことが関係しています。彼らが世界の一流選手と競争するためには、持っている実力に加えて、体のもとになる食事と栄養が重要だとわかってきたからです。そういうこともあって、スポーツ栄養学は多くの人に知られ、定着するようになりました。
酸素を体中に届けるヘモグロビン
スポーツ選手に不足しがちなのが鉄というミネラルです。鉄は、赤血球の中にあるヘモグロビンのもとになります。ヘモグロビンは酸素を全身の細胞に届ける役割を担います。有酸素運動を行い持久力を必要とするスポーツには酸素を届ける多量のヘモグロビンが必要になり、体内の鉄の消費が多くなってしまうのです。鉄が足りなくなると貧血になりますが、スポーツが原因の場合は「スポーツ貧血」と呼びます。これを防ぐためには、バランスの取れた食事はもちろんのこと、特に鉄の多い赤身の肉や魚、レバーや貝、ひじき、ほうれん草などの食品をとることが望まれます。
成長期の栄養の重要性
栄養士としては、プロの選手に対する栄養指導も大切ですが、成長期の栄養指導が効果的です。スポーツ選手の体をつくるのは、学童期や成長期であるジュニアの時代だからです。たとえスポーツ選手にならなくても、健康で毎日を活動的に過ごすためには健全な食生活が必要なのは言うまでもありません。今の日本は飽食の時代で、コンビニエンスストアやファストフード店で簡単に食べ物が手に入ります。また、食事の欧米化や偏食から必要なビタミンやミネラルが不足しがちです。そんな時代だからこそ、子どもの頃から何を選んで何を食べるかということがポイントで、子どもたちへの栄養指導と同時に、家庭での食事づくりを担う保護者の理解を得ることも重要です。これからのスポーツ栄養学は、食育の一環と考えて取り組む必要があるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
神戸女子大学 健康福祉学部 健康スポーツ栄養学科 准教授 坂元 美子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
スポーツ栄養学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?