「乳酸菌は体にいい」 その根拠をつきとめろ!
乳酸菌の効能
ヨーグルトや発酵食品などに含まれる乳酸菌が、健康に良い影響を与えることは広く知られています。しかし、効能の多くはこれまでの経験則によるものであり、科学的根拠が明らかになっている乳酸菌は一握りしかありません。これまでに発見された乳酸菌は400種類以上あり、しかも乳酸菌の場合は同じ種でも株(一つの細菌から分裂増殖した菌の集まり)ごとに異なる性質になるため、それぞれの株の解析が必要です。
野菜に付着している乳酸菌
乳酸菌が免疫を高める機能に注目し、その研究では免疫を活性化させる乳酸菌を野菜に付着している乳酸菌から探し出そうとしています。野菜を洗った液を寒天培地に塗り広げると、乳酸菌1匹ごとに丸いコロニーを作り出します。さまざまな野菜から乳酸菌を採取し、それぞれを哺乳類の免疫細胞と一緒に培養します。その中で、免疫細胞を最も活性化させた株を選び出し、その株がどのような物質を分泌しているかを分析していきます。現在の研究の段階では、この株が分泌する多糖類が人の免疫系を刺激して活性化させることがわかってきました。
分泌物の構造を調べる
この多糖類の構造を特定するためには、乳酸菌から多糖類を抽出・精製する方法を確立しなければいけません。株ごとに違う性質を見極めながら試行錯誤を繰り返していきます。また、多糖類は数種類の単糖が混合しているので、酸素処理やゲルろ過により一つひとつを分離し、核磁気共鳴法やガスクロマトグラフィーなどの複数の手段を組み合わせて免疫力を高める効果のある多糖の構造を調べます。その結果、免疫を活性化させる多糖類が合成できるようになれば、ワクチンの効果を高める免疫増強剤としての使用が期待できます。
現在は、個々の乳酸菌の特性を解明している段階ですが、実際の腸内の環境では複数の菌が一緒に活動しており、腸内細菌同士がどのように影響を与え合っているかも調べる必要があります。その環境下において効果がある機能性の成分が何かを解き明かせれば、乳酸菌をより効率的に利用できるはずです。
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石川県立大学 生物資源環境学部 生物資源工学研究所 講師 松﨑 千秋 先生
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