企業と連携して新たな製品をつくる

企業と連携して新たな製品をつくる

グリーンケミストリーに沿った製造技術の開発

現代の生活に欠かせない各種工業製品を製造する場合、少し前までなら安定した品質で、安全かつ安価であることが求められてきました。
最近では、省エネルギー、省資源や環境に配慮した製造技術の開発、そして、石油代替資源の開発が新たな課題となっています。これらを解決する方法としてグリーンケミストリーがあります。

地下資源の代用品をめざす

バイオエタノールからエチレンなどを製造したり、畜産糞尿から石油代替の化学原料を製造する以外にも、下水処理の最終段階で発生する汚泥から、ガソリン相当の石油を製造する技術があります。すでに、この技術で生成されたガソリンを使って、草刈り機を動かすことが可能になっています。石油などの地下資源は、地底に埋まった動植物の死骸が、何億年もの時間をかけて化学変化したものです。この自然の経年変化を人工的に再現する触媒(化学変化を促進させる物質)ができたのです。この製造技術によって将来、化学原料としての石油代替油の大量生産が可能になれば、地下資源の代用となるだけでなく、廃棄物を活用した循環型社会の実現へ向けた技術になると、大きく期待されています。

研究テーマは現場から生まれる

実際には、このような研究は、企業と連携して行われます。一般的な学問の研究は、大学や一部の研究機関のみで進められることが多いのですが、工学の場合は工業化を前提とした技術開発が研究テーマとなります。つまり、生産の現場から生まれる技術開発のニーズから研究がスタートするのです。製造現場の情報を知ることで、製造プロセスにおいて発生する問題は何か、その問題解決のために開発すべき技術とは何か、と考えていくことができるのです。
今後は、大学から企業に対して新しいプロジェクトを仕掛けていくことも必要だと考えられています。大学が持つ知的財産を企業に紹介・提案し、実用化に結び付けていくことが、このジャンルの目標と言えます。

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先生情報 / 大学情報

北海道大学 工学部  教授 増田 隆夫 先生

北海道大学 工学部 教授 増田 隆夫 先生

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化学工学、有機プロセス工学

メッセージ

化学が好きなあなたは大学・企業へと進む内に大きく二つの方向に進むことになります。一つは数種の化学物質から高付加価値の物質を合成する研究、もう一つは多種の混合物から有用物質を製造する研究です。後者は複雑系の化学であり、製造現場に直結した実用化研究です。劣質な資源を石油代替資源に変える技術、バイオマス(廃棄物を含む)から有用化学物質を生産する技術などは複雑系の化学です。対象とする反応器は大きいもので25mプールに相当します。世の中、純粋のものよりも混ざり合ったものの方が実は面白いのです。

北海道大学に関心を持ったあなたは

北海道大学は、学士号を授与する日本最初の大学である札幌農学校として1876年に創設されました。初代教頭のクラーク博士が札幌を去る際に学生に残した、「Boys, be ambitious!」は、日本の若者によく知られた言葉で本学のモットーでもあります。また、140余年の歴史の中で教育研究の理念として、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を掲げ、現在、国際的な教育研究の拠点を目指して教職員・学生が一丸となって努力しています。