より安全で人に優しい人工骨の開発
体内で安全な人工骨
現在、骨の再生は世界中で研究が進められています。身近なところでは、失った歯根の代わりに人工歯根を埋め込むインプラント治療や人工股関節を埋め込む治療があります。この治療には、現在チタンが使われていますが、チタンには金属アレルギーを起こす可能性がないとも言えず、より使い勝手のいい安全な人工骨が求められています。その一つが、ガラス状炭素や合金を使った人工骨です。この人工骨は、長年の使用で擦れても人体に有害となる磨耗片を出したり、体内で腐食したりすることがなく、じゅうぶんな強度があり、使い勝手もいいので、チタンに代わる人工骨として大きな可能性を秘めた素材です。
整形外科分野でも注目される表面処理
高齢人口の増加にともない、インプラントや人工股関節の手術が年々増加していますが、高齢者は骨代謝がよくないので、金属の人工関節と骨との結合がうまくいきません。最近、骨と強く結合するための人工骨の表面処理技術が開発されました。この技術を使うと短い時間で強く結合する人工骨を作ることができ、高齢者にも応用できます。この処理技術は国際特許として公開されています。
骨の増殖を速めるコラーゲンを用いた新素材
インプラント治療や人工股関節の手術などの際、人工骨を歯茎や骨に埋め込みますが、このとき周囲と多少の隙間ができてしまうことがあります。そこから感染症を起こすこともあるため、この隙間を埋める素材として研究されているのが、もともと体内にあるコラーゲンです。金属系の骨増殖因子を入れたコラーゲンを使うと、骨が増殖し、体内で骨が再生します。その期間は2週間から1カ月です。既に、動物実験、細胞実験では成功し、国際特許を取得しています。世界に先駆けた骨増殖因子として、今後治験を経て、認可されることが期待されます。
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先生情報 / 大学情報
山形大学 工学部 化学・バイオ工学科 教授 山本 修 先生
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