妊婦と赤ちゃんを守り、その後の人生にも切れ目のない支援を
妊娠高血圧症候群を重症化させない
女性が妊娠をきっかけに発症する主な病気に、妊娠糖尿病と妊娠高血圧症候群があります。妊娠すると自然に生じる生理作用が、妊婦の負荷となったり、上手く機能しない場合に発症します。妊婦の高血圧は生活習慣の問題と考えられていた時期もありましたが、現在は、妊娠初期の胎盤形成期に血流循環の仕組みがうまく形成されないことによるものと示唆されています。大切なのは、その後の重症化を防ぐことです。自然な経過をたどる妊婦の生活データを分析しながら、妊娠期から出産後の母子の健康を支援するための研究を進めています。
産後うつの母親を救え!
ほかにも、無事に出産を終えてから産後うつを発症し自殺してしまう女性が少なくありません。特に、育児期にその率が高く、メンタルヘルスのサポートが重要視されています。産後うつを発症する要因の1つに少子化の影響が考えられます。周りに子育て中の人があまりいないことや、自らが一人っ子だったことなど、子どもと接した経験が少なく、子育てをイメージできないのです。メンタルに問題を抱えてしまい、自ら発信できずにいる母親は少なくありません。それが育児放棄や虐待につながる恐れもあり、医療保険制度の利用ができる訪問看護など、産後ケアのシステムづくりが課題になっています。
女性のライフステージとも向き合う
妊娠・出産・育児期をよりよく過ごすことができるようにするためには、妊娠前の女性への健康支援が必要です。助産師は思春期や青年期の月経教育、性教育、親になる準備教育などを学校や自治体と連携して行っています。子育てに一段落する頃には女性ホルモンの分泌が低下し、更年期症状や加齢に伴う病気が表れ始めます。更年期や老年期の保健教育や祖父母への孫育て教室などを開催し、助産師は女性のライフステージに関わりながら、命の誕生に向き合う役割を担っているのです。妊娠する・しないを決める権利、安全に不妊治療を受ける権利など、さまざまな女性の権利を重視し、サポートしています。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 福岡医療技術学部 看護学科 教授 椎葉 美千代 先生
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