化学+哲学で宇宙とつながる! 新しい技術・分子開発へ
化学と、宇宙と哲学との関係
古代中国の思想が「宇宙は相容れない2つの要素から成り立っている」と説いていますが、化学の分野においてもこの関係を用いることがあり、宇宙と化学はつながっています。宇宙には、超新星爆発などによって生まれた元素や化合物があり、地球上の物質や生物も、分子が集まった化合物でできています。
体内の小宇宙ともいえる細胞内で、酵素化学反応と有機化学反応という、異なる2つの反応を同時に別々に起こすこともできます。しかも互いに影響を与え合い複雑化します。この現象を「バイオ・オルソゴナル(オルトゴナル)反応」といいます。
哲学的視点から新しい開発へ
一般に、分子構造や機能を解析して分子設計することで、新しい分子や創薬の開発などを行います。こうした化学に哲学を加えると、分子とは何か、なぜ化学反応は起こるのか、自ら反応を起こす細胞は生物としてみるべきか、といった視点を得られます。そこから、これまでにない新しい技術や分子を開発できる可能性が広がります。
また体内では、作られた物質が淘汰(とうた)される現象も起きています。例えば、病原体に反応する抗体は、多くの種類がつくられますが、有効なものが残ります。創薬の際にさまざまな物質で試行錯誤するのと同じようなことが、体内で起こっているのです。
大量合成が難しい糖鎖
例えば、多くの細胞の表面には、糖が鎖状につながる糖鎖という物質が存在します。これは、細胞の化学反応や、細菌・ウイルスの「結合」に関わっています。インフルエンザウイルスも糖鎖に結合して侵入しますが、それを破壊する酵素も持っていて、これを阻害する分子でつくられているのが抗インフルエンザ薬です。この糖鎖の機能や仕組みの解明が、人体を守ることにつながります。しかしこの糖鎖には多くの種類があるうえ、その分子構造を知ることができても、大量合成が難しいことがネックとなり、研究がなかなか進まないのです。そこで有機化学に哲学的視点を持ち込むことで、大量合成に向けた模索が続けられています。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 工学部 生物工学科 教授 蟹江 治 先生
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