あなたの暮らしを豊かにする有機合成化学
有機合成化学とは何か
有機合成化学とは、有機化合物の合成を研究する学問です。有機化合物は炭素原子(C)を含む化合物(分子)で、多くの有機化合物は炭素と炭素、炭素と水素(H)の結合をもっています。有機化合物には多くの種類があります。原油、天然ガス、食物、木材、皮革、繊維などは、生物を由来とする天然有機化合物です。また、人間が石油などから作り出した人工有機化合物には、ガソリン、プラスチック、合成繊維、医薬品、塗料などさまざまなものがあります。
暮らしを豊かに発展させた有機合成化学
かつて、有機化合物は生命体に特有の産物で、人工的には作れないと思われていました。その考えを打破し、無機化合物から尿素を合成したのが、19世紀のドイツ人化学者F.ウェーラーです。ウェーラーの研究を発端として、有機合成化学が幕を開け、さまざまな有機化合物が人工的に合成できるようになっていきました。有機化合物の人工的な合成(有機合成)は、人間の暮らしを豊かにしてきました。その一つの例に医薬品の開発があります。19世紀半ばに、ドイツ人化学者のA.W.H.コルベは、サリチル酸の合成に成功しました。当時、サリチル酸は鎮痛薬として利用され、柳の木から抽出されていました。コルベの成功により、鎮痛薬を安く大量に作ることができるようになったのです。このように、それまで天然品に頼っていたために稀少で高価だった有機化合物が、有機合成化学の発展により安価に大量に供給できるようになり、日常生活に豊かさをもたらしました。
有機合成化学の未来
現在、有機化合物はテレビやパソコン用の液晶材料としても利用されています。今後は、ますます電子材料としての用途が期待され、新しい機能をもつ有機化合物の開発が求められています。また、現在の人工有機化合物の原料の多くは石油ですが、石油のみに頼らない方法を模索すること、合成過程で有害な廃棄物を出さない方法を開発することなど、資源の有効利用と環境調和に配慮したものづくりが期待されています。
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