高地に滞在するだけが「高地トレーニング」ではない!
なぜアスリートは高地トレーニングをするのか?
アスリート、特に陸上競技や競泳の選手は、よく標高の高い土地でトレーニングを行います。高地は気圧が低いため、体内に酸素が取り込みづらく、人間にとっては「低酸素環境」となります。低酸素環境下でトレーニングをすることによって、低地に戻ってきたときに、血液が酸素を運搬する能力が上がる効果があるのです。しかし、やみくもに高地でトレーニングをしても、運動能力がアップするとは限りません。
「低地滞在、高地トレーニング」が効率的
一般に知られている高地トレーニングは、「高地に滞在して、高地でトレーニングをする」というものです。しかしその方法だと、効果を上げるためには標高2500メートル以上の高地で4週間以上過ごす必要があることがわかっています。一方で、「低地で寝泊まりして、高地でトレーニングする」という方法を使った場合、5日間ほどのトレーニングで運動中の消費エネルギーが減少するという効果が認められました。つまり、1日の中で低地と高地両方の酸素環境下に身を置くことで、より運動効率が上がり、疲れにくくなったのです。自動車に例えると、「燃費が上がった」と言えます。
「運動効率」をいかに上げるか
日本のスポーツ指導の現場でも、科学的なトレーニングの手法が次第に定着してきました。しかし、いまだに経験則や感覚による指導も多く行われており、科学的な裏付けに基づいた「効率の良いトレーニング」のさらなる浸透が求められています。例えば、ある動作をするときには、必ず複数の筋肉が使われます。たくさんの筋肉の動きがうまくシンクロすれば、筋力自体を増強しなくてもパフォーマンスを上げることができるのです。綱引きで全員が引っ張るタイミングを合わせれば、人数を増やさなくても大きな力を発揮できるのと同じ理屈です。
このような考え方で運動効率を良くすることが、トレーニングの時短につながり、結果的に体をしっかり回復させることにもつながっていくのです。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 体育学部 競技スポーツ学科 助教 丹治 史弥 先生
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