なぜ健康維持には運動が必要なのか?
血管は硬くなる
健康維持になぜ運動が必要なのでしょうか? ここでは血管を例に取り上げて説明します。細動脈という、直径100~200μm程度の非常に細い動脈が硬くなってしまい、そこに一気に大量の血液を押し込もうとすると(高血圧)、血管が破れることがあります。血管はもともと柔らかいのですが、脂質がたくさん流れていたり(脂質異常症)、血管の内側に障害がある場合(糖尿病など)は、脂質が溜まりやすくなります。脂質の蓄積により内膜の肥厚(ひこう)がおき、さらに血管が細く、硬くなり破れやすくなってしまうのです。血管が破れてしまうと、そこから先には血液によって酸素や栄養が運ばれてこなくなってしまい、組織は動かなくなってしまいます。例えば、心臓自身に血液を供給している血管の一部が詰まったり、破れると、心臓のある部分が動かなくなってしまいます。心臓は非常に精密に、四つの部屋を順序よく収縮させることで血液を送り出しているのですが、この動きがおかしくなると、全身に血液をうまく送れなくなってしまいます。
柔らかい血管を維持するために
では、どうすれば柔らかい血管のままでいられるのでしょう? そこで運動が必要になります。まず、低強度運動は内臓蓄積型肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧を改善します。さらに、血管にも筋肉があり、運動をリズミカルに行うことで、血管自体の機能にもよい影響をあたえます。片足だけで軽く自転車を1時間こぐ運動トレーニングを一定期間行い、運動を行った脚と、運動を行わなかった脚で、血管のコンプライアンス値(伸展性:内圧が増えたときに血管がどれだけ伸びるか)の違いを比較すると、運動を行った脚の血管だけが、実験を行う前に比べてコンプライアンス値が向上し、血管が柔らかくなっていました。このように血管を柔らかくするためには、低強度の運動を長時間行うことが良いのです。
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先生情報 / 大学情報
県立広島大学 地域創生学部 地域創生学科 健康科学コース 教授 三浦 朗 先生
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