おいしい果物づくりの秘訣は「根っこ」にあり!

乾燥させるとかんきつ類は甘くなる
甘いかんきつ類が好まれる傾向にありますが、かんきつ類を栽培する過程で乾燥させると、より甘い果実ができることがわかりました。一般的にかんきつ類は4月頃に花を咲かせてその年の冬に実をつけますが、夏の1、2週間のあいだ水やりを減らして乾燥させると、果実の糖度が高くなります。これは十分な水を与えられなかった木が、果実の糖度を上げることで水が濃度の高い方へ移動しようとする力(浸透圧)を利用して、根から水分をできるだけ多く吸い上げようとするためと考えられます。おいしい果実を作るには、根の働きに着目することが重要なのです。
乾燥させると機能性も高くなる
かんきつ類の糖度を上げるために乾燥させると、抗酸化作用などの機能性を持つカロテノイド類も増加することがわかりました。これは乾燥状態にある木が、葉からの蒸散を抑えるために気孔を閉じる植物ホルモンを作りますが、その過程で中間物質であるカロテノイド類が増えるためと考えられます。
研究では、夏に乾燥処理を行った後、収穫した果実について糖度や酸味、大きさなどまず商品としての価値を調べます。さらに付加価値の向上をめざしてカロテノイド類の含有量も確認します。果樹の研究は、成長に時間がかかるだけでなく、その年によって気候などの生育条件が異なるため、何年もかけて調べていく必要があります。
根を温めれば木全体が元気に
熱帯果樹の栽培は、冬の暖房にコストがかかります。国産のマンゴーやパパイヤが高価なのはそのためです。また燃料費が高騰すれば、農家にとって死活問題です。そこで、冬の暖房費を抑えようと、従来の温室全体を温めるのではなく、木のどこか一部を温めるだけでも木を元気にできないか調査されました。すると、根を温めてやれば水をしっかり吸収して木全体が元気になることがわかりました。実験ではポットの周りをヒーターで覆って温められましたが、実際の農地ではどのように温めれば効率的であるか、実用化に向けた研究が進められています。
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東海大学農学部 農学科 講師佐伯 爽 先生
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