理学・作業療法における動物の可能性 自立手段としての動物介在療法

理学・作業療法における動物の可能性 自立手段としての動物介在療法

医療現場での人と動物の関わり

障がいのある人が、杖や車いす、補聴器などの器具を使って体の機能を補うことは一般的に行われています。そんな補助の1つに、動物を介した方法があります。医療現場で作業療法士と動物のボランティアがチームで取り組み、治療として動物を介入させる方法を「動物介在療法」と言います。盲導犬はよく知られていますが、介助犬はあまり知られていません。

介助犬の効果

例えば、体の片側が麻痺した人が歩くときには、片側に寄ってしまうなど、歩行パターンに支障が出ます。これを補うために、通常は杖や歩行器など自助具と呼ばれる福祉機器を利用してバランスを取ります。自助具の代わりに、介助犬を利用する方法では、訓練を繰り返す中で犬が利用者の微妙なニュアンスを覚えて、絶妙なところで推進力やブレーキを与え、スムーズな歩行を実現させてくれます。ロボットも進化していますが、介助犬にはロボットや器具では成し得ないことを実現できる可能性があり「生きた自助具」とも言われています。医療現場では介助犬の効果によって、障がいのある人が「次なる一歩」を踏み出すことが期待されています。

作業療法士の引き出しに介助犬という選択肢を

医療現場で活躍する1人でも多くの作業療法士が介助犬が、杖や歩行器などと同様に、自助具の1つであり、人を身体的に介助ができるということを知ることが重要であり、リハビリの中で「介助犬という選択肢」があることを当事者に伝えられるようになることが期待されています。
そのためには、自助具として「犬はどんなことができ、どんな特性があるのか?」「ロボットとの違いは何か?」などの比較研究も必要です。犬は生き物なのですぐに関係性が築けて動いてくれるわけではありません。しかし利用者からは「介助犬が行った動作は自分が行っているように感じる」という声が聞かれます。現在、介助犬が人に与える効果を科学的に証明しようと、三次元動作分析装置を使用して身体的な効果やインタビューなどを通じた精神的な効果の研究が進められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

四條畷学園大学 リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 教授 野口 裕美 先生

四條畷学園大学 リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 教授 野口 裕美 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

作業療法学、理学療法学

メッセージ

犬や猫の動物が「人の健康」に良い影響を与えることが報告されています。「動物介在療法」は、動物を介在させて治療する療法のことであり、介助犬は障がい者にとって生きた自助具としての役割を担っています。理学療法や作業療法の手段として動物が医療中で効果を発揮していることをぜひ、知ってほしいと思います。
四條畷学園大学は、動物介在療法や介助犬についてリハビリテーションの視点から学べるチャンスがある全国的にもユニークな大学です。規模が小さい分、教員と学生の関係も近いので、興味があれば、ぜひ一緒に研究しましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

四條畷学園大学に関心を持ったあなたは

医療技術者(理学療法士・作業療法士・看護師)を養成する大学です。リハビリテーション学部は、学生にとって魅力あるカリキュラム編成と100を超える実習施設が整っており、国家試験合格実績も着実に伸ばしています。また、小規模だからこそ実現できる教員・学生間の親密さが国家試験合格までの懇切丁寧な指導につながっています。看護学部は、取得資格を看護師一本に特化したことによりカリキュラムを充実させました。講義・演習→実習という学修サイクルを形成し、より深い理解につなげ、実践力のある看護師の育成をめざします。