体臭から読み取る健康情報 カギは「皮膚ガス」にあり
甘くていいにおいがする人の秘密
「香水をつけていないのに、なぜか甘くていいにおいがする」という人がいたら、ラクトンが含まれた「皮膚ガス」が出ているかもしれません。皮膚ガスは、ヒトの皮膚から発生する微量の生体ガスで、ラクトンは桃のような甘いにおいの成分です。健康な人の皮膚ガスを分析したところ、ラクトンの発生は特に10~20代前半の女性に多く、女性ホルモンの分泌や腸内環境のよさ(善玉菌であるビフィズス菌の多さ)に関連があることがわかりました。
アンモニアが原因の「疲労臭」
一方、体の疲れが原因で発生するアンモニア臭は「疲労臭」と名付けられています。刺激臭がするアンモニアは通常、腸内で発生して肝臓で分解され、尿として体外に出ます。ところが、食生活の乱れなどで肝臓の働きが弱まったり、腸内環境の悪化や筋肉疲労でアンモニアが過剰に発生したりすると、肝臓で分解されなかったアンモニアは血流に乗り体内を循環します。それが揮発し、皮膚ガスとして体外に出るのです。
皮膚ガスの発生にはこの「血液由来」のほかに、汗をかくことで発生する「皮膚腺由来」や、皮膚表面の常在菌などに由来する「表面反応由来」もあります。汗や皮膚表面の常在菌は洗えば落ちるのに対して、血液由来の皮膚ガスは洗っても落ちず、体の状態を知る良いシグナルになります。
皮膚ガスから広がるコラボ
筋肉疲労で血中のアンモニア濃度が上がることは1980年代には知られていましたが、近年の研究で、不安や緊張といったメンタルストレスからもアンモニアを含む皮膚ガスが発生することがわかりました。そこで、皮膚ガスのアンモニアと反応すると色が変わる、リストバンド型のセンサーも開発されています。皮膚ガスから心身の健康状態を読み取り、病気のサインを早期に発見して対策することで、生活の質の向上が期待されます。また、ヘルスケアだけでなく、食品やIT、自動車など、さまざまな産業界とのコラボによる研究も進んでいます。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 理学部 化学科 教授 関根 嘉香 先生
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