宗教の多様性を理解し、多文化共生を実現する
宗教上の理由からのピアス
南米やインドなどの地域では、女の子が生まれると健康と幸せを願ってピアスを開ける宗教儀式があります。一方で、日本では校則でピアスが禁止されている学校が多くあります。南米やインド出身の生徒が日本の学校に通う場合、宗教上の理由なら校則違反が許されるのか、ほかの学生の理解が得られるのかといった葛藤が起きています。
日本における宗教への不信感
日本は政教分離がかなり厳密な社会であり、教育の分野でも宗教に踏み込もうとしない傾向がみられます。例えば、キリスト教に関して日本に入ってきた歴史は学ぶものの、教えの中身やどのような信仰を実践しているかを学ぶ機会はほとんどありません。報道などでは、宗教に関するネガティブな面が多く取り上げられ、現在の日本の若い世代は特定の宗教に属さないと考える人が増えています。
しかし、日本では結婚式はチャペルで挙げ、子どもが生まれたら初宮参りに行き、七五三のお祝いをして、亡くなった時にはお経をあげるというように、人生のあらゆるタイミングで宗教的行事に関わります。宗教そのものへの関心は低く、宗教に関する不信感につながっている一方で、神社やお寺の御朱印集めが流行するというような、相反した現象もみられます。
多文化共生の実現に向けて
ネガティブな面への偏見から宗教を遠ざけてしまうのではなく、関心を持って知識を得ることはとても大切です。社会の国際化が進むほど人は国を越えて移動し、それにともなってさまざまな宗教が入ってきます。例えば、お墓参りに行った時に、墓前で爆竹を鳴らしている人がいたらどう思うでしょうか。中国の宗教文化を背景に持つ人にとっては、お墓参りに爆竹は欠かせません。単に禁止し排除するだけでは、解決を図るのは難しいでしょう。人々の宗教を知ることで、行動や考え方が理解できるようになり、そこから問題解決への道を探ることができます。多文化共生の実現には、宗教への知識を得ることが大事なのです。
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東海大学 文学部 文明学科 准教授 李 賢京 先生
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