デリケートなお肌 効き過ぎない「効き目」を求めて

デリケートなお肌 効き過ぎない「効き目」を求めて

効き過ぎてはいけないのが「化粧品」

私たちの体を覆っている皮膚、見えているのはすべて死んだ細胞で、ほんの数十マイクロメートル下には生きた細胞が控えています。この最表面にある死んだ細胞の集まりが角層であり、外界の異物から私たちの体を守ってくれています。化粧品では、その生きた細胞まで有効成分をどのように届けるかがとても重要です。医薬品医療機器等法(旧 薬事法)では、「化粧品は緩和な効果があるもの」として定義されており、医薬品とは対照的に、即効性の効果はNGです。化粧品というのは、あくまでも健康と美容のための「ゆるい効果」が期待されるものであり、効果が出過ぎてはいけないものなのです。

市場のニーズと基礎研究

「化粧品=女性が使うもの」と認識されがちですが、昨今では男性用化粧品が店頭に並んでいるのを目にします。また、AIを活用した擬似メイク、肌質に合わせて作るオーダーメイド化粧品など、化粧品の研究開発も多様化しています。このような流行を見極める先見性も研究者や開発者にとって重要な素養と言えるでしょう。
時代のニーズに応じた新しい化粧品や評価技術を開拓するためには、基礎となる化学、物理、生物のほか、大学で学ぶ専門分野の知識、および研究スキルは欠かせません。大学4年生で1年間、大学院生(修士)であればトータル3年間、基礎研究のテーマに取り組むことで、論理性や実験技術、英語力などの研究基盤が育まれます。

さらに安心できる成分を開発していく

化粧品をはじめ、あらゆる生活必需品は化学物質でできています。あまり印象の良くない化粧品原料である界面活性剤も化学物質の1つです。化粧品での主な役割は、身体をキレイにすること、有効成分を溶液の中で安定に保ち、品質を安定化させること、また肌への浸透も助けます。一方、環境や皮膚への負荷などを考慮して、界面活性剤の代替品開発も進められています。代替品が必ずしも質の良い化粧品であるとは限りませんが、新しい研究成果やアイディアが私たちの生活を豊かにしてくれています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

神奈川大学 化学生命学部 生命機能学科 教授 山下 裕司 先生

神奈川大学 化学生命学部 生命機能学科 教授 山下 裕司 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

化粧品製剤学、コロイド界面化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

大学での化粧品研究とは、化粧品自体の研究だけでなく、体の仕組みを医学的に考え、どういったモノ作りをしていくべきか、正しい知識と技術を学ぶ場です。研究者をめざす人は、時代の流れを読むことも重要とはいえ、安全性やモノ作りの責任という本質を見誤ってはいけません。そして、高校生のあなたも、今から好きなこと、興味のあることを全力で取り組んでいく姿勢で、人生を送ってほしいと願っています。目先の利益にとらわれず、その時々、苦労はあってもやり遂げていくような人生をめざしてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

神奈川大学に関心を持ったあなたは

1928年創立以来、真の実学をめざし、自ら成長できる人材を育成してきました。近年では2021年、グローバル系3学部が集うみなとみらいキャンパスが誕生。2022年、「建築学部」を開設、2023年には理工学部を改組し「化学生命、情報学部」を開設。文理11学部すべてを横浜エリアに集結させ、世界レベルをめざす総合大学として、新たな一歩を踏み出しました。
また返還不要な奨学金制度も充実。12月下旬に全国22会場で実施の給費生試験で合格、入学すると、4年間で最大880万円の奨学金が給付されます。