形成外科医が、「精神外科医」と呼ばれる理由とは?
形成外科の4つの柱
「形成外科」という名前は知っていても、どんな分野なのかをはっきりと説明できる人は少ないかもしれません。形成外科には「やけどやけがなどの外傷」「皮膚軟部組織の腫瘍切除とその後の再建」「体表面の先天異常」「美容外科」という4つの柱があり、さまざまな身体の部分を創るいわば「創造する外科」です。人の目に触れやすい箇所の組織再建なども手掛けるため、一昔前の「ただ治ればいい」という考え方から、治癒を前提とした「社会復帰をサポートするための施術やフォローアップ」が必須の時代へと変化してきています。
形成外科医は「手術で心を癒やす」
皮膚の再建には欠損部に隣接する皮膚や近辺の皮膚を移動させる「局所皮弁」という手法がありますが、これを用いると手術箇所との質感や色の差異が少なくなります。さらにほうれい線や目の下などのポイントに合わせて境目をつくることで傷跡が目立ちにくくなり、その後の社会復帰にも大きな助けとなっています。
患者さんのほとんどは悩みやコンプレックスを抱いています。そこに寄り添いながら信頼関係を築き、手術で悩みを解消して笑顔で社会復帰してもらうのが治療の目的です。このため、形成外科医は「精神外科医」とも呼ばれるのです。どこの組織をどう移植し、再建するかということにおいて、さまざまな選択肢の中から患者さんにとってのベストを探すという、幅広い知識と同時に、アイデアやこだわりも試される分野です。
進化を続ける再建技術
形成外科では、けがで失われた顔の部分をほかの部位から移植して治したり、乳がんなどで乳房を失った人に別組織を使って再建したりと、組織を移植して再建を行います。そして、このような組織を移植し定着させるために必要となるのが血管です。従来は筋肉を含めた比較的太い血管しか移植できなかったのが、技術の進歩もあり筋肉を含まない細い血管のみでも移植可能になっています。このようにできることの幅が広がることで、形成外科では、より多くの患者さんに対するケアが可能となってきているのです。
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先生情報 / 大学情報
弘前大学 医学部 医学科 教授 漆舘 聡志 先生
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