分子が勝手にくっついて新しい材料が生まれる!?
新しい材料開発を可能にする自己組織化
技術の進歩によってLSI半導体の回路は、年々微細化され、計算スピードが速くなっています。これは、大きいものや広いものをどんどん小さくする、小さく加工する技術を開発するという「トップダウン」の考え方に基づいています。
しかし、分子のサイズに近づいたナノスケールの微細な世界ではこれ以上小型化する加工は困難になっています。そこで、「ボトムアップ」的な方法、一言でいうと「自己組織化」という考え方で、新しい材料を開発する方法が研究されています。自己組織化とはどういうことなのでしょうか?
自己組織化とはどういう現象か
自己組織化とは、ナノレベルの微細な分子単位が勝手につながって新しい材料を作ることです。この単位を「元素ブロック」といういろいろな元素を組み合わせた分子にすると、今までにない性質を持つ材料を開発できます。そのためには、自己組織化のメカニズムを解明することが重要です。
分子を溶かした溶液中に金属の基盤を入れると、その基板の表面では、分子が動きまわり、お互いに集まる二次元の自己組織化が起こります。走査型トンネル顕微鏡という特殊な顕微鏡を使うと、吸着した個々の分子の形だけでなく、分子が並んでいく様子までをその場で観察することができるため、目で見るように自己組織化現象を研究することができます。
脳の仕組みをまねた新しいコンピュータ
分子と分子の間には、相互作用と呼ばれる「引力」もしくは「反発力」が働いています。この相互作用をうまく調整してやると、自己組織化によって分子や元素ブロックを並べたり、つないだりすることができます。
電気や信号を流すことのできる分子を自在に並べれば、脳の神経細胞(シナプス)と同じような構造を作り出すこともできるかもしれません。そうすれば、現在のコンピュータとは違った新しいコンピュータを作ることも可能になるでしょう。
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