皮膚の下にも汗をかく!? 見えない汗も検出するOCTのすごい実力
光を使った高画質の断層撮影装置
体内を写し出す画像診断装置。医療現場では、X線を使ったCT装置、核磁気共鳴を使ったMRI、陽電子でがん細胞を見つけるPET診断装置、超音波で画像を作る超音波エコー診断装置、レーザー光による生体機能計測装置などが利用され、デジタル技術の革新により、めざましい進歩を遂げています。「OCT(光コヒーレンストモグラフィ)」もその一つです。光(近赤外線)を身体に照射して反射光で断層画像を作るOCTは、身体への負担がなく、X線やCTの実に約10倍もの高い分解能(デジカメで言う解像度のこと)で組織を見ることができます。
微量の発汗も逃さず測定
OCTを使った汗腺の解析実験を紹介します。汗腺は、体温調節のために皮膚表面から汗を出す役割がありますが、指先や手のひら、足の裏、額の一部にある汗腺は、緊張したときやものを握ったときにも汗を出します。これを、体温調節のための温熱性発汗に対し、「精神性発汗」と呼びます。この精神性発汗をOCTで測定したところ、「ものを握る」という刺激に反応して手のひらにある汗腺が膨張し、汗を排出する様子が精密に写し出されました。さらに、ガラスの割れる音など不快な音を聞かせたとき、皮膚表面には汗が出てこないものの、皮膚下ではにじみ出ていることが測定でわかったのです。このような弱い発汗活動は、皮膚表面の水分量を計測する従来の発汗計では調べられません。
より精密な3次元画像で診断装置の花形に
OCTは現在、眼科で網膜剥離の診断装置などとして使われており、今後はさまざまな診療科への普及が期待されています。例えば、発汗は交感神経の働きに関係しているため、つぶさに解析することで、病気の新たな診断や治療に生かせるはずです。また、OCTを内視鏡の先に付ければ、血管や食道など身体の深部を観察することもできます。画質や測定スピードの改良をさらに重ねれば、OCTが画像診断装置の花形になる日も遠くないでしょう。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 医学部 保健学科 放射線技術科学専攻 教授 近江 雅人 先生
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