生き物の群れを自在に操る! 群れの制御理論に挑む
生き物の群れを自在に操りたい
アフリカや中東に生息しているサバクトビバッタは、何千万匹もの大群を作って農作物を食べつくすことで知られています。もしもこのバッタの群を操り、大群にならないようにできれば、食料問題の改善につなげられるはずです。あるいは、遠洋でのマグロ漁には高い燃料費や人件費がかかりますが、マグロの群れをうまく近くへ誘導することができれば、もっと安いマグロが食卓に並ぶでしょう。
人は自動車や機械を巧みに操る技術を発展させてきましたが、その一方でそれぞれが自由に動き回る生き物の群れのコントロールは未だ困難です。生物の群れの行動を理解し、制御工学の観点から制御理論を組み立てる新しい研究が始まっています。
まずは基本的な数理モデルから
生き物の群を制御する難しさのひとつは、個体差があるということです。まずは「ボイドモデル」と呼ばれる標準的な群のモデルを使って、従順な個体やはみ出し者の個体の混ざった群をうまくまとめられるような数理モデルを作り、それが正しく働くかどうかをシミュレーションで検証します。標準的な群に対する制御理論が確立したのちに、魚やバッタなどそれぞれの生き物の性質や習性を取り入れて、実際の課題解決への応用をめざすのです。
スワームロボットやサイボーグインセクトも
群の制御理論が役に立つのは生き物だけではありません。スワーム(群)ロボットは、ひとつひとつの動きが単純なロボットを安価かつ大量に作ったうえで、群としての制御を行います。また、マダガスカルゴキブリにICチップなどのデバイスを搭載した「サイボーグインセクト」は、被災地での活躍が期待されています。マダガスカルゴキブリはサイボーグインセクトのエースで、デバイスから電気刺激を与えて操作し、通常のロボットでは入れないがれきの下などに潜って被災者を捜索します。ゴキブリはもともと群れませんが、群を作って被災地に赴き、その場をまんべんなく捜索するような群制御技術の開発が進められています。
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大阪大学 大学院情報科学研究科 バイオ情報工学専攻 招へい教授 小蔵 正輝 先生
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