地域の暮らしや文化を入り口に、中国の魅力を知る
黄土高原での暮らし
中国の「黄土高原」といえば、黄砂の発生地の一つとして知られています。雨が少なく、夏と冬の気温差が激しいこの地に暮らすことは簡単ではありませんが、人々は長い歴史の中で生活を営み、自分たちの社会や文化をつくってきました。樹木が生育しにくい環境の中で人々が暮らしてきた住居が「ヤオトン」です。崖地に横穴を掘ったり、地面を掘ったりしてつくることから「土の中の家」と呼ばれており、実際に寝泊まりしてみるととても快適です。
日本との違い
こうした黄土高原の生活や文化の研究では、現地を定期的に訪れて、人々と生活をともにすることではじめて見えてくることが少なくありません。例えば、日本では「他人に迷惑をかけてはならない」という考え方が強く、それが個人主義的な価値観につながっている面もありますが、黄土高原の人々はそうではありません。それぞれが人的なネットワークを構築して、お金の貸し借りを含めて何かを頼んだり、頼まれたりといった融通の利く人間関係を築くことが得意なのです。日本は保健や医療体制といったインフラが発達していますが、人々のつながりが強い黄土高原の方が「安心して暮らせる」という見方もできます。
中国を知ること
アニメや漫画作品をきっかけに中国に興味をもつ若者もいますが、日中間の政治的な冷え込みを背景に、中国を「怖い」「嫌い」と感じる人も少なくありません。しかし、中国には黄土高原のような地域社会もあれば、約3,000万人が暮らす大都市もいくつもあり、歴史や文化においても実に多様な魅力をもっています。ビジネスの分野でも世界中に影響力を広げている昨今、人々の暮らしや文化、歴史などさまざまな点から中国に関心をもち、掘り下げて正しく知ることは、現代を生きる私たちにとってより大きな意味をもつのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 外国語学部 外国語学科 中国語専攻 教授 深尾 葉子 先生
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