めざせ! 食べるとやる気や認知力が高まる食品の開発
食べものから作られる高機能ペプチドの探索
食べものとして摂取されたタンパク質は、アミノ酸に分解されて体に吸収されます。しかし最近の研究により、アミノ酸が2個から15個程度、結合したペプチドの状態でも吸収されることがわかってきました。ペプチドは私たちの体でも作られ、血糖値を調節するインスリンのようにさまざまな働きをしています。それらと同じように、食べて体に良い効果を発揮する高い機能を持ったペプチドが探索されています。その中で、脳機能への効果が期待されているのが、コラーゲンペプチドです。
コラーゲンペプチドが脳を救う
コラーゲンは腸で分解されにくく、ペプチドとして残りやすいという特徴があります。食べものが消化・吸収された後に通過する血管から採血して調べると、コラーゲンペプチドが検出されます。確かに分解されずに吸収されているのです。コラーゲンペプチドが脳脊髄液にも見られ、脳にまで到達していることがわかりました。
ネズミを使った実験では、コラーゲンペプチドにはやる気や認知力を高める効果があることが示唆されています。意欲や記憶をつかさどる脳の海馬には、神経幹細胞と呼ばれる増殖能を持った細胞があり、ストレスをかけると神経幹細胞の増殖が停止することがわかっています。この神経幹細胞を培養してコラーゲンペプチドを添加したところ、増殖が活性化されました。脳機能を向上するメカニズムが明らかにされつつあります。
目標は高機能性食品の開発
近年、脳の病気であるうつや認知症の患者が増加し深刻な問題となっています。コラーゲンをはじめ、さまざまな食品タンパク質からやる気や認知力を向上するペプチドが発見されています。実際にどのようなメカニズムで食品ペプチドが脳の細胞に作用しているのか、現在研究が進められています。そして、研究結果をもとにした、病気の予防や治療に役立つ高機能性食品の開発が目標とされています。コラーゲンは、骨や皮など食品廃棄物に豊富にあります。そのような廃棄物資源も健康増進のために有効に活用されています。
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先生情報 / 大学情報
宇都宮大学 農学部 応用生命化学科 准教授 水重 貴文 先生
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生物化学、栄養化学、神経科学、生命科学先生が目指すSDGs
先生への質問
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