新しい反応・分子の発見が、新しい技術や製品を生みだす
存在しなかったものを生み出す原動力
あなたが愛用しているスマホには、厚さ1mmにも満たない液晶または有機ELのカラーディスプレイが用いられています。この極薄ディスプレイは、今やどのメーカーのスマホでも用いられていますが、携帯電話が普及し始めた頃には存在しなかった部品です。
これに限らず、私たちの身の回りには「以前は存在しなかった」部品で構成された製品が無数にあります。その存在しなかったものを生み出す原動力となっているのが、「有機合成化学」という研究領域です。
偶然生まれた新分子に新機能が潜んでいる?
有機合成化学の研究では、異なる有機分子を結合させたり反応させたりすることで、それまで存在しなかった分子を合成します。新しい分子が持つ機能や特徴を生かした素材が開発されることで、新しい部品が作り出さるわけです。
「こんな機能の分子を作る」という目標を決める場合もありますが、新しい反応を探しているうちに、新機能を持つ新分子が偶然生まれたり、従来と比べて圧倒的に短時間で反応を完了させる手法が見つかったりすることが多いので、宝探し的な面白さが、この研究領域の魅力と言えるかもしれません。
よく知られた反応なのに未解明な部分も
「クロスカップリング反応」という言葉を耳にしたことはありますか。日本人研究者が開発した反応で、2010年、ノーベル化学賞の受賞対象となりました。スマホ液晶やさまざまな医薬品などが、この反応を利用して生み出されています。
それほどよく知られた反応でありながら、反応の進行を支配する原理などについては未解明な部分がかなり残っています。そこで、反応のキーとなっているホウ素に着目した研究が進んでいます。これまでに、新しいホウ素化反応が複数開発されたのに加え、「ルイス酸性」を抑制した有機ホウ素からクロスカップリングの生成物を得る反応も開発されました。ここから近い将来、新しい反応を利用した新素材や、それを使った画期的な製品の登場が期待されます。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 理学部 化学科 教授 吉田 拡人 先生
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有機合成化学、有機金属化学、有機化学先生が目指すSDGs
先生への質問
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