土にすむ微生物「放線菌」から、薬剤や酵素をつくる!
抗生物質は放線菌がつくっている
「放線菌」は土壌中に存在している微生物です。栄養分を与えて培養すると薬のもとになる物質をつくり出す性質があり、結核の特効薬として知られている抗生物質ストレプトマイシンは放線菌から発見されました。数ある放線菌の中から薬になる物質をつくり出す放線菌を見つけることは容易ではありませんが、今ではさまざまな抗生物質が医薬品として役立っています。
また放線菌は、一部の酵素をつくる菌として産業界でも利用されています。その1つ、グルコース・イソメラーゼという微生物酵素は、ブドウ糖を甘みのもとになる果糖にするため、清涼飲料水の生産に使用されています。
セルロースを簡単に分解したい
セルロース系バイオマスは、身の回りにある草や木に由来する再生可能な資源です。セルロース、ヘミセルロース、リグニンで主に構成され、このうちセルロースを分解して得られるグルコース(ブドウ糖)はバイオエタノールの原料にもなります。しかしセルロースはとても頑丈で、分解するのが難しいため、糖分を得やすいトウモロコシやサトウキビなどの食糧を原料にすることが主流となってきました。
それでもセルロースは、セルラーゼという酵素で分解できます。そしてセルラーゼは、放線菌の中にも存在しています。ですから、放線菌の力でセルロースを分解し、使いやすいものに変えることができれば、食糧を使わないエタノールの生産も効率よく行えます。
おがくずだって薬の原料になる?
抗生物質をつくり出す放線菌と、セルロースを分解する放線菌は、おおむね種類が異なります。もし両方の能力を持つ放線菌を遺伝子工学的につくり出すことができれば、おがくずや間伐材から薬をつくれるかもしれません。
また、自然界に豊富に存在するセルロース系バイオマスを原料にすることは、環境にも大きな利点になります。すぐに実用化はできなくても、長期的視野で研究を続けていくことが必要です。
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先生情報 / 大学情報
秋田県立大学 生物資源科学部 応用生物科学科 准教授 春日 和 先生
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