未開発の自閉症の治療薬 一つでも完成すれば世界が変わる!
自閉症の薬があれば
自閉スペクトラム症(自閉症)は、対人関係が苦手、強いこだわりがあるといった特性をもつ発達障害の一つで、約60人に1人が診断されると言われるほど、身近な存在です。
現在、自閉症の治療薬や症状を改善させる薬はありません。薬理学的にも未開発の状態です。薬が一つでもできれば、薬剤師や医師との連携ができて、定期的なサポート体制ができるなど、今とはまったく異なる環境をつくることができます。今でも、自閉症の症状が学校や社会でのいじめや偏見などの原因になることがあります。もちろん社会的な理解が広がることが大切ですが、治療ができれば、そうした事態を減らすことにもつながります。
DNAのメカニズムを解明
創薬には、自閉症を発症する分子メカニズムを明らかにする必要があります。ここ数年でDNAのゲノム解析が進歩して、自閉症の原因となるDNAの異常などが見つかっていますが、その数は100以上あります。それらは個々で働いているのではなく、さまざまなネットワークでつながっています。似た機能を果たしているものもあれば、タンパク質などと相互作用があるものもあります。100個以上のDNAの働きと、それらの相互作用やネットワークのバランスといった全貌が解明すれば、治療薬の完成に一歩近づくことができるでしょう。
また、自閉症の人は知的障害を併発する人と、しない人がいます。そのメカニズムもわかれば、併発も防げるようになるかもしれません。
誰もが生きやすい社会へ
自閉症を発症するのは、胎児のときが多いことがわかっています。現段階では胎児への治療は非常に難しい状態です。いずれは遺伝子パネルを用いた出生前診断や、出生後に診断ができるようになります。そのときに薬があれば、すぐに治療を開始できます。
自閉症発症の解明は、自閉症の子を育てる環境を整えることにもつながります。誰もが生きやすい社会をつくるためにも、まず「最初の薬」ができることが望まれているのです。
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先生情報 / 大学情報
山陽小野田市立山口東京理科大学 薬学部 薬学科 講師 中川 直 先生
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