免震構造で街を丸ごと地震から守る
建物に地震の揺れを伝えない免震
地震が多い日本では、建物への対策が不可欠です。近年、高層ビルやマンション、戸建住宅で採用されているのは、免震構造というしくみです。簡単にいえば、建物と地面を切り離すという考えを基本とした構造です。普段は建物を支えていますが、地震が起きると建物と基礎の間に設置した積層ゴムが大きく動いて、建物に強い揺れを伝えないようにします。
以前は、建物を丈夫にする耐震構造が主流でした。1995年の阪神淡路大震災時に、免震構造で建築した住宅には影響がなかったことから注目され、一気に全国へ広まりました。
街全体を免震にして人々を守る
現在は、個々の建築物に免震構造を施していますが、街を丸ごと免震構造にすることも可能です。実際に、千葉県のある団地では、免震構造で人工地盤をつくり、その上に住宅や道路などが設計されています。地震が起きた時、道に人がいたり、公園で子どもたちが遊んでいたりします。それらすべてを免震にすることで、街全体の被害を最小限に抑えられます。
技術的には可能ですが、実際には法律や制度が弊害となり、実現は難しくなっています。ほとんどの土地や建物は個人の所有物で、自由にできないからです。しかし、土地や街を開発するディベロッパーなどの協力を得られれば、可能性がみえてきます。
地震後の生活の維持を考える
そもそも建物は、人や生活を守るシェルターとしての役割があり、地震で壊れるとその役割を果たせません。免震構造の建物だけが無事でも、そうでない建物が壊れた人は避難生活が始まり、日常生活が寸断されます。街全体に免震が施されていれば、すぐに日常生活を送ることができます。今、災害後も生活を継続する方法を考える、「ライフ・コンティニュイティ・プラン」が注目されています。
想定されている南海トラフ地震は、これまで経験したことのない揺れが起こる可能性があります。想定外の地震に耐えうる免震構造の開発とともに、人々を丸ごと守るしくみが必要となっているのです。
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