社会の安心・安全を縁の下で支える、金属の強化・軽量化の研究
軽くするために、強くする
自動車や航空機など、安心・安全な運航に加えて省エネが求められる工業製品にとって、金属部品の軽量化は永遠の課題ともいえるテーマです。金属のなかでも多く使われるチタンを例にとると、小さく身近な製品としては、歯科で使うインプラント(人工歯根)の材料としても使われています。金属は、強度や摩擦への強さを高める基礎研究があって初めて、製品全体の軽量化が実現します。歯の場合は耐久性に加え、人体への安全性も大きな課題です。安全性やコストパフォーマンスの追究は、いわば、社会を縁の下で支えているといえます。
壊すことから始まる研究
「金属疲労」は専門用語ですが、大きな事故などの原因としてニュースでたびたび取りあげられます。チタンは、金属疲労を起こしにくい強い材料です。物を破壊するという行為はネガティブに受け取られがちですが、創造のためには「破壊研究」が必要です。壊れにくい強い金属を作るには、どういう力を加えれば金属疲労が起きて壊れるかを、徹底的に何千万回と繰り返し実験しないとわかりません。人間は休めば体力を回復できますが、金属の場合は疲労が蓄積していきます。壊れるメカニズムを知っているからこそ、壊れないものが生み出せるのです。
壊れないためのひと工夫
ものづくりや仕組みづくりには、「昔からあるものを改良する」と「まったく新しいものを生みだす」という方法があります。強い金属をさらに強くする場合、すでにあるものを改良していく発想は重要です。金属を加熱して表面から窒素を浸透させる「窒化処理」は以前から使われていますが、加熱でこすれに強くなるものの、高熱にさらされるために強度が下がるという課題もあります。そこで、これまでの経験を活かして、「熱を加えることなく窒素を浸透させる」といった新しい研究も行われています。
より良い品質の金属ができれば、部品段階でもエネルギー削減につながるのです。
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静岡大学 工学部 機械工学科 准教授 菊池 将一 先生
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