コンクリートも病気になる? 長持ちする構造物を作るために
コンクリートがかかる病気とは
建築物などに使われているコンクリートも、人間のように「病気」にかかることがあります。例えばコンクリートの中で骨材との反応物(反応ゲル)が引き起こすひび割れです。コンクリート中は内部には小さな穴がたくさんあり、この穴の中は高いアルカリ性を示します。高いアルカリ性に置かれたある種の骨材は反応して、水分を含むと膨張する反応物を作ります。この膨張が大きくなると、その圧力によってコンクリートにひび割れが生じてしまうのです。
内部の水がひび割れを起こす
骨材との反応物の膨張は当初、コンクリート構造物の表面から雨水などが入ってくることで起こると考えられていました。表面を塗膜で覆い水分を遮断する対策が行われたものの、効果はいまひとつです。さらに研究が進むとコンクリート内部に含まれる水でも膨張やひび割れを起こしていることが明らかになりました。
塗膜に代わるひび割れ対策手段として開発されたのが、撥水剤です。コンクリート内部に染みこませた撥水剤は表面からの水の浸入を防ぐと同時に、コンクリート内部の水を外に逃すことができます。その結果、コンクリートは次第に乾燥し、膨張するスピードがゆるやかになります。このように対策を施しながら、致命的なダメージを与えるひび割れなどがないか監視が続けられています。
丈夫で壊しやすい材料を作る
長持ちするコンクリートを作るためには、密実(高い強度)にするアプローチが主流です。コンクリート内の穴が小さくなり、水や有害なものが広がりにくくなるからです。しかし強度の高いコンクリート構造物は解体や更新が必要となった際に、壊しにくいことが短所になります。
そこで比較的解体しやすい一般的なコンクリートを対象に、高い強度のコンクリートと同じように穴を小さくして耐久性を上げる研究が行われており、例えばシリカフュームという微粒子はコンクリートの穴で反応し、吸水を大幅に防ぐ性質があるとわかりました。これを利用して水を通しにくいコンクリート構造物を実現しようとしています。
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金沢大学 理工学域 地球社会基盤学類 准教授 久保 善司 先生
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