「粉」をコントロールして、新材料を自在につくる

「粉」をコントロールして、新材料を自在につくる

ナノ物質を自在に操るカギは「粉」の設計

今、注目されるナノ物質が続々と誕生しています。ところが、その特徴をうまく活用できていないのが現状です。逆に言えば、ナノ物質の特質を最大限に生かせれば、今までにない新しい材料をつくれます。
新しい材料をつくる際、ナノ物質と素材(原料)などを単に混ぜようとしても、均一に混ぜることはできません。それが材料開発を困難にしていました。その課題を解決するために「粉」に注目しました。ナノ物質と原料を精密に設計するのです。

静電相互作用でナノ粒子を集積化

粉末同士を、ただ混ぜるだけでは均一になりません。セラミックや金属といった母材となる粒子に、ナノ物質の小さな粒子を吸着させるには、粒子間に生じる静電相互作用を利用します。
まず母材の粒子表面に帯びている電気(表面電荷)を、高分子電解質を用いてプラスにします。ナノ物質の粒子表面はマイナスにします。これで磁石が引き合うように、母材粒子の1つひとつにナノ物質の粒子が隙間なくくっつきます。この状態で成形すると、ナノ物質を均一に混合できるのです。
熱伝導率が高いナノ物質を使えば熱放出に利用でき、電気の通りやすいナノ物質を用いればタッチパネルをつくることができます。太陽熱や赤外線を通さないナノ物質を含めたガラスをつくれば、自動車のウインドウに活用できるでしょう。材料の粒子を設計することで、欲しい特徴をもつ素材づくりが可能になります。

新しい材料で次世代のモノづくりへ

この方法で、どんな素材でも、どのナノ物質でも複合化できます。しかも球状や板状、ファイバー状など形も自在です。割れやすくて加工しにくいセラミックは、レーザー吸収率の高いナノ粒子を付加すれば、レーザーを用いる3Dプリンターで自在に形が作れるようになります。
アイデア次第で、どんな材料もつくれます。新しい材料をつくる研究を通じて、モノづくりの可能性が広がっていくのです。

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豊橋技術科学大学 工学部 総合教育院(電気・電子情報工学系兼務) 教授 武藤 浩行 先生

豊橋技術科学大学 工学部 総合教育院(電気・電子情報工学系兼務) 教授 武藤 浩行 先生

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材料工学、電気・電子工学

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メッセージ

近年は、AIやロボット、ビッグデータなど、話題になる分野も多く、特定の分野に人が流れていきやすい傾向があります。しかし、特定の分野だけを見ていても新しい発見はありません。その分野に長けることはできますが、広がりがなくなるのです。「これは関係があるか」「これとこれを組み合わせたらどうなるか」などと、広い目で周辺の分野もぜひ見てください。
成功者の多くは、周辺分野や隙間の領域に着目しています。これからの時代は、そうした目を養うことが大切になるでしょう。

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本学は、平成28年10月に創立40周年を迎えた工学系単科大学で、世界に開かれたトップクラスの工学系大学をめざしています。社会産業構造の変化、グローバル化時代に対応した人材育成の要求に対応するため、「基幹産業を支える先端的技術分野」と「持続的発展社会のための先導的技術分野」の2つの柱(5課程)で成り立っています。卒業生・修了生は「実践的・指導的技術者」として日本を代表する企業で活躍しています。