将来はパソコンやスマホも電源いらず? 静電気からエネルギーを
やっかいな静電気を有効活用
冬になると身の回りで静電気が発生します。ドアノブなどをさわった途端に「バチッ」と衝撃が走る静電気を好きな人はいないでしょう。しかし、この嫌われ者の静電気も活用次第で私たちの生活に役立つエネルギーに変えることができるのです。静電気は主に衣類の繊維がこすれることで体に蓄積されます。その蓄積された静電気をエネルギーに変えて、例えば夜道を安全に歩くため服を発光させたり、小さな電球程度ならバッテリーなしで点灯させたりすることができます。
塵を山にする技術
微弱な静電気でも、「塵(ちり)も積もれば山となる」です。衣類の繊維内に金属材料の電極を仕込めば、日常生活で発生する静電気をエネルギーとして蓄えておくことが可能です。衣類の素材の組み合わせや形状によって発電効率が変わるため、効果的にエネルギーを蓄積する方法について現在、研究が進められています。例えば、通常は硬くて曲がらない金属電極を衣類に仕込むには、金属を細い繊維状の束にします。こうすることで柔軟性と通気性が高まり、より効率的な発電が可能となります。
災害大国日本において必須の技術
この研究は歴史が浅く、スマートフォンやパソコンなどを駆動させることは技術的にまだできません。しかし、私たちの生活は、地震や噴火、台風や竜巻などの自然災害をはじめ、疫病の発生、戦争・紛争など、さまざまなリスクと隣り合わせです。非常事態において電源を確保することは死活問題です。今や誰もがスマートフォンやパソコンでコミュニケーションや情報収集を行っています。電気が遮断された状態でも静電気をエネルギーに変えることができれば、非常時もそれらの機器が使え、二次災害を減らすことができるでしょう。衣類だけでなく、ほかの日用品などにも電極を仕込むことで、日常で発生するあらゆる動作からエネルギーを生み出せます。資源が乏しい日本において、これらの技術は大きな可能性を秘めているのです。
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先生情報 / 大学情報
福井大学 工学部 物質・生命化学科 准教授 坂元 博昭 先生
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