水素がエネルギー問題を解決する?
燃料としての水素
環境やエネルギーへの関心が高まる中で、水素を燃料とする研究が進んでいます。水素は燃やしても有害な物質が基本的に排出されないクリーンな燃料です。また、あらゆるエネルギー源から作ることができるため枯渇することのない燃料と言えます。水素を利用したエンジンや燃料電池について研究が進められ、すでに一部実用化されつつあります。
熱効率を上げるために
水素エンジンには、燃料電池に比べて出力が大きいというメリットがありますが、デメリットもあります。エンジンは燃料の燃焼で生じる熱を運動エネルギーに変換する機械ですが、エンジンの中で生じた熱の一部はどうしてもシリンダーなどを伝って外に逃げてしまいます。これを熱損失と言いますが、ガソリンエンジンの熱損失は燃焼熱の2~3割なのに対して、水素エンジンではその2倍くらいの熱損失が生じることがあります。水素はガソリンに比べて燃焼の速度が格段に大きく、エンジン内の流動が激しくなるため、通常の燃やし方をすると熱損失が多くなってしまいます。水素エンジンでは、この熱損失をどうやって減らすかが熱効率を上げるためのカギとなります。そこで、普通のエンジンでは燃料と空気をあらかじめ混合した状態で供給して燃焼させるのですが、「直接噴射層状給気」という手法で水素を供給することで、炎の周囲にできる空気の層を断熱層とする研究があります。これによって、水素エンジンの熱損失を減らして熱効率を上げることができます。
他分野の知見の組み合わせ
水素は体積あたりのエネルギー量が小さく、水素エンジンでガソリンエンジンと同等の出力を得るには、大量の水素が必要となります。しかし、自動車では限られたスペースに燃料を高い密度で搭載することが求められます。これは、密度の高い液体メタノールを搭載して、車の上でメタノールから化学反応で水素を生成することで解決できます。
このように、エネルギー問題の解決には、機械工学だけでなく化学などほかの学問分野の知見を組み合わせることも有効です。
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