GPS衛星は現代の北極星だ
位置を割り出す仕組み
人工衛星を利用して位置を割り出すGPS(全地球測位システム)は、人工衛星自体が対象の位置を把握しているわけではありません。人工衛星は信号を発しているだけで、それをキャッチするのにかかった時間から、受信機側が人工衛星との距離を計算しているのです。最低でも3カ所からの距離がわかれば位置を割り出せますが、受信機の時計は人工衛星の原子時計と誤差があるため、通常は4基以上の人工衛星で、位置を計算しています。それでも近くに高い山やビル、壁などがあると跳ね返った信号で計算してしまうため、携帯電話やカーナビのGPSは実際の位置とのズレが生じることがあります。また、厳密に言えば、GPSを使って割り出せるのは自らの位置のみです。他者が対象の位置を直接割り出す場合は、例えば、GPS機能をもった携帯電話から基地局に送られた位置情報をたどっているにすぎないのです。
こんなところにもGPSが
基本的に上空にある人工衛星が多いほど、位置情報の精度は高まります。例えば船舶や飛行機の運行には、より高性能かつ高信頼なGPSが搭載されています。また高精度のGPSは平面上だけでなく高低も1cm単位で測れますから、自動車レースF1ではコースの傾斜測定に使用していますし、測量や地震速報にも欠かせません。
今後の運用方法
実はGPSは正確には世界共通のものではなく、アメリカ固有のシステムです。各国がGPSと同様の独自のシステムの構築をめざしています。GPSに依存していた日本も、2010年に人工衛星「みちびき」を打ち上げました。また天気予報のイメージが強い「ひまわり」も、6号と7号は運輸多目的衛星であり、測位システムを見据えて作られています。「みちびき」を中心に整備が進む日本の衛星測位システム「準天頂衛星システム」により、今後はより精度の高い位置情報が得られたり、車を自動で走行させる高速道路の「オートパイロットシステム」や屋内測位による人や作業ロボットの誘導など、より高度な使い方が実用化されるでしょう。
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