土壌細菌から水素を! 限りない微生物の可能性
微生物から再生可能エネルギーを
この世界には、膨大な量のさまざまな微生物が存在します。そして、土壌に含まれている細菌から、水素ガスやエタノールがつくられることがわかっています。細菌は公園の花壇など全国どこにでもいるので、これが実用化されれば、化石燃料に代わる有用な再生可能エネルギーとなります。
実用化にあたり、課題は大きく分けて2つあります。1つは発酵させる材料、もう1つは生産コストです。まずは、これらの課題をクリアすることが求められています。
より環境に優しい方法を模索
土壌細菌から水素ガスを発生させるには、発酵の過程が必要です。例えばコンニャクに含まれるグルコマンナンという糖が、効率よく水素やエタノールを発生させることがわかっています。ただ、地球環境のためには「廃棄される物」を利用することが望ましく、グルコマンナンに似た糖をもつコーヒーかすを試すなど、より環境に負荷がかからない材料の模索が続いています。
発酵には酸素がない状態をつくることと、60度の温度環境が欠かせません。設備投資費用を抑える方法や、エネルギーの生産率が高い方法を見つけることも不可欠です。
ほかにも、草木や食物で捨てられる茎や葉などの部分を微生物で分解して発酵させることで「バイオエタノール」を生成できます。植物に含まれる細胞壁(セルロース)をいかに効果的に分解するかがなかなか厄介な課題となっていますが、実現すれば地球環境を守る大きな一歩となるでしょう。
新種発見の可能性大
このように、微生物を有用に活用する生物工学が今、注目されています。微生物の機能は素晴らしく、今はまだ解明途中ですが、マイクロプラスチックを分解する微生物も発見されています。現在わかっている微生物はほんの数%でしかなく、ほとんどの微生物は未解明の状態です。そこから新しい微生物の新しい機能が発見されれば、SDGsにつながる「新しい方法」が発明される可能性が高まるのです。
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先生情報 / 大学情報
前橋工科大学 工学部 情報・生命工学群 准教授 林 秀謙 先生
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