新たな技術が社会で活用されるのために必要なこと

新たな技術が社会で活用されるのために必要なこと

安全な水の確保と衛生的な生活の確保のために

安全な水と衛生的な環境は私たちが生活していく上で欠かせないものです。安全な水は病原微生物がいない水源の確保および供給により実現します。一方、糞便に含まれる病原微生物を生活環境から排除するためのトイレの設置が衛生的な環境の実現には不可欠です。注意すべきはトイレ排水の行方です。糞便に含まれる病原微生物が処理されないと、いずれ水源となる地下水や河川を汚染し、安全な水供給を脅かすことになるかもしれません。水をどう供給するかだけでなく、使った水をどう排出するかも含めたトータルなシステムとして考える必要があります。

途上国の実態調査と対策の提案

海外には下水道がない地域が多くあります。例えばスリランカの郊外地域では、水供給は普及しているものの、トイレ排水は各家庭で個別に簡便な処理をしたのちに土壌や河川に排出されています。しかし処理が十分かどうかの実態はわかっていません。周辺地下水の汚染状況や処理法との関係性が調査され、その対策方法が提案されていますが、十分に調査が進んでいません。調査方法の改善や、得られたデータの分析法にも課題が残っており、研究が進められています。

工学的成果の社会実装のために

調査技術を進展させ、科学的データを得ることで、より客観的でより効果的な解決法の提案が可能です。これが工学的成果です。しかしそれだけで社会には役立ちません。例えばトイレ排水の個別処理には、効果的に病原微生物を減少させられる方法がわかってきましたが、その導入には住民にその意志がないと進みません。単に科学的データを示すだけでなく情報の受け手がストレスなく受容し、行動に移せるような情報提供方法が研究されています。ARなどの先端技術の活用は新しい可能性を生むと期待されています。このように工学的成果の社会実装には、人文学・社会科学も含め、多様な分野が共に創り出す、共創というコンセプトが重要となるのです。

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先生情報 / 大学情報

お茶の水女子大学 共創工学部 人間環境工学科 教授 大瀧 雅寛 先生

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水環境工学

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メッセージ

受験勉強も大事ですが、進路を決めるにも、大学で研究テーマを選ぶにも、社会の動きを知ることが欠かせません。人との対話などを通じて、幅広く情報を集めましょう。そのときに重要なのは、情報を取捨選択する意識を持つことです。特に好きな人や尊敬する人の話は鵜呑みにしがちです。自分が情報を発信するときにも、伝え方に注意を払いましょう。確信のない情報を断定的に伝えてしまうと、さまざまな誤解を生みます。適切な情報収集・発信ができる力を身に付け、役立ててほしいです。

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日本における女性教育の先達であるお茶の水女子大学は、国際的状況のなかで、政治、経済、学術、文化をはじめ各界のオピニオン・リーダーとなりうる女性を育成するプログラムを世界に示しています。それは、「21世紀型お茶の水女子大学モデル」であり、本学が重視していることは次の三点です。
1.女子高等教育の未来への発展
2.研究の拠点化と21世紀型教養教育
3.社会貢献と国際交流
新たな発想に基づく先端的研究開発は、お茶の水女子大学の研究の特徴です。