水中の生態系バランスをコントロールして、持続可能な農業へ!

水中の生態系バランスをコントロールして、持続可能な農業へ!

農業に関わる水環境を研究する「水環境工学」

食糧生産を支える農業は、人間社会が存続するための根本的な営みです。その農業の基盤となる農地に必要不可欠なものが、河川やため池などの水環境施設です。農地用の水利用施設では、植物やプランクトンの繁殖による水質汚染など、さまざまな問題が生じます。そこでほかの生物や環境と共存しながら、持続可能な食糧生産を目的とした農地のための水環境を研究しているのが、水環境工学です。

農業用ため池の水質管理

農業用ため池のように、水の流れが閉鎖的な場所の水質は、主に風や日光の作用の影響を受けます。風や日光は天気によってはゼロとなるため、水の流れが停滞しやすく、よどみやすいという問題があります。またハスやヒシなど、ため池の水面に浮かぶ浮葉性の水草は、日光を遮断するので、やはり水の流れに影響を与えます。適切にため池の水質を管理する手法を探るには、まずはため池の水の流れの特性を解析する必要があります。そこで現地観測だけでなく、コンピュータで対象水域をシミュレーションし、数値解析する研究が進められています。

地球にやさしい水環境の管理方法とは?

ほかの生物や環境と共存しながら、水環境を考えることが、現代のSDGs(持続可能な開発目標)の時代に求められています。水環境での植物やプランクトンの問題なども、生態系のバランスをコントロールすることで、人力や農薬などに頼ることなく、対処する研究が必要となってきました。例えば、近年、河川では川床に過剰に繁茂したカワシオグサ(アオノロ)によって、アユのエサとなる苔が生えないという問題があります。現地調査によると、ダムの下流の砂が流れていない環境でカワシオグサが生えていることがわかりました。この結果から、砂の量や水の流れや形を変えた水理実験が進められています。また夏季にため池でよく起こる、藍藻類の異常増殖によるアオコの問題についても、水生植物によって発生を抑える研究が進められています。

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先生情報 / 大学情報

岩手大学 農学部 食料生産環境学科 農村地域デザイン学コース 准教授 濵上 邦彦 先生

岩手大学 農学部 食料生産環境学科 農村地域デザイン学コース 准教授 濵上 邦彦 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

水環境工学、農業環境工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

農学部で学べる農業に関する学問の中には、「生産する生物」に関する学問と「生物を生産する場」に関する学問があります。生物を生産する場といえば、水田や畑をイメージするでしょう。しかし田植えの時期に雨が降らなければ、河川やため池から水を引いてこなくてはなりません。
水環境工学は、河川やため池について研究し、農業の基盤を支える学問です。あなたが「日本の農業を支えたい」と考えるなら、向いていると思います。生物だけでなく、数学や物理の知識を生かせて、社会に貢献できる学問です。

先生への質問

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