暮らしに欠かせない水環境~その現状と未来を考える~
住まいの給排水という水の仕掛け
モンゴルの遊牧民が暮らすゲルにはなくて、私たちの家に欠かせないものとは何でしょう? 答えは給排水設備です。ゲルの中には水道管も排水管もありませんが、暮らす場所に変わりありません。彼らは外部の環境と関わり合いながら住むところを決め、川が少ないのであまり水を使わない暮らし方をしているのです。
私たちが外部環境を考慮することなく、どこででも生活できるのは、建物の中に給排水という水の仕掛けがいろいろあるからです。
排水溝の先を考えてみよう
蛇口をひねると出てくる水道の水は塩素で消毒してあります。強い殺菌力でウイルスなどを死滅させ、飲料水として供給するためです。塩素そのものを体内に入れてもいいのかという疑問もありますが、それが建物の水環境に対する現在の常識です。では排水された殺菌力の強い塩素はどこへ行くのでしょう。
江戸の街では当時から上下水道が整備されていました。上下水道が一緒というところも多くありました。なぜそんなことが可能だったのかというと、油を使うことがなく、排泄物は肥溜(こえだ)めに、洗濯は塩と炭でという生活だったからです。水を使って捨てることが当たり前の現代社会においては衛生設備も重要ですが、目に見えない排水溝のその先はどうなっているのか、考えてみることも必要です。
水環境から考える未来のまちづくり
かつては地域の至る所に小川が流れていました。それが下水道になり、道の下に埋められていきました。今となっては地中の小川をすべてもとに戻すことも、暮らしに必要不可欠な給排水設備の仕組みを大きく変えるというのも、モンゴルの遊牧民のように暮らすことも難しいことです。
しかし私たちの生活の先にある、自然環境のメカニズムと未来について、そのあり方に思いをめぐらせることは大切です。自然にも人にもやさしい未来のまちづくりを水環境から考えながら、私たちの意識を変えていくことが求められているのです。
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先生情報 / 大学情報
東北文化学園大学 工学部 建築環境学科 教授 八十川 淳 先生
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