講義No.12848 生物学 化学

猫はマタタビが大好き! その秘密を探る

猫はマタタビが大好き! その秘密を探る

ライオンから猫までマタタビが大好き

猫にマタタビを与えると、夢中になるのは有名です。およそ300年前の書物にもこの「マタタビ反応」が記録されており、1950年には日本の科学者がマタタビの葉から「マタタビラクトン」を発見しました。ライオンを含むすべての猫科の動物はマタタビ反応を持っています。ライオンから猫に分岐したのはおよそ1000万年前と言われており、長期間保存されてきたマタタビ反応の意味についての研究が進められてきました。この研究から、種と関係なく反応しない個体が3割ほどいることもわかり、反応する個体としない個体には、生存のための優位差があるのではないかという視点が新たに加わりました。

「マタタビラクトン」と「ネペタラクトール」

実験で、マタタビの葉の抽出物をさらに細かい物質ごとに分離し、7グループに分けて猫に与えました。すると、マタタビラクトン以外のグループにさらに強い反応を示すことがわかり、ここから「ネペタラクトール」が発見されました。ネペタラクトールは1950年の蒸留技術では壊れてしまって抽出できていなかったのです。さらにその後の研究で、マタタビラクトンとネペタラクトールが1:1で混ざった状態が、猫の食いつきが一番良いこともわかりました。

生き残るための虫除け対策

猫以外の生物にも試したところ、これらは蚊がとても嫌がる物質であることがわかりました。また、猫が噛んで傷がつくことで、マタタビの葉から放出されるネペタラクトールとマタタビラクトンが、それまで9:1の割合からそれぞれ20程度の量まで増加し、1:1の比率の時に蚊への忌避効果も最大になることが明らかになりました。つまり、マタタビを体に擦り付けることは虫除けになり、猫にとっての生存戦略だったのです。この物質は猫以外の動物の虫除けにも活用できます。
このように普段の生活で素朴な疑問を持ち、仮説を実験によって立証していくことは、人間に有用な物質の発見にもつながっていきます。

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岩手大学 農学部 応用生物化学科(令和7年度から農学部 生命科学科 分子生命医科学コース所属) 教授 宮崎 雅雄 先生

岩手大学 農学部 応用生物化学科(令和7年度から農学部 生命科学科 分子生命医科学コース所属) 教授 宮崎 雅雄 先生

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メッセージ

高校までの勉強には答えがありますが、大学では、答えのない問題を追い求めていくことになります。なんてことのない生物現象にも、まだわかっていない意味があるのではないかと考えるのが大学での研究です。科学技術がどんどん発展しているので、昔の研究をやり直すことでも新たな発見があります。例えば、すでに絶滅してしまった動物の遺伝子データも手に入るので、同じ種でも生き残っているものと絶滅したものでは遺伝子の何が違うのかを調べ、絶滅の原因に近づくこともできます。常に自分で問題を作り、答えを探しましょう。

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