猫はマタタビが大好き! その秘密を探る
ライオンから猫までマタタビが大好き
猫にマタタビを与えると、夢中になるのは有名です。およそ300年前の書物にもこの「マタタビ反応」が記録されており、1950年には日本の科学者がマタタビの葉から「マタタビラクトン」を発見しました。ライオンを含むすべての猫科の動物はマタタビ反応を持っています。ライオンから猫に分岐したのはおよそ1000万年前と言われており、長期間保存されてきたマタタビ反応の意味についての研究が進められてきました。この研究から、種と関係なく反応しない個体が3割ほどいることもわかり、反応する個体としない個体には、生存のための優位差があるのではないかという視点が新たに加わりました。
「マタタビラクトン」と「ネペタラクトール」
実験で、マタタビの葉の抽出物をさらに細かい物質ごとに分離し、7グループに分けて猫に与えました。すると、マタタビラクトン以外のグループにさらに強い反応を示すことがわかり、ここから「ネペタラクトール」が発見されました。ネペタラクトールは1950年の蒸留技術では壊れてしまって抽出できていなかったのです。さらにその後の研究で、マタタビラクトンとネペタラクトールが1:1で混ざった状態が、猫の食いつきが一番良いこともわかりました。
生き残るための虫除け対策
猫以外の生物にも試したところ、これらは蚊がとても嫌がる物質であることがわかりました。また、猫が噛んで傷がつくことで、マタタビの葉から放出されるネペタラクトールとマタタビラクトンが、それまで9:1の割合からそれぞれ20程度の量まで増加し、1:1の比率の時に蚊への忌避効果も最大になることが明らかになりました。つまり、マタタビを体に擦り付けることは虫除けになり、猫にとっての生存戦略だったのです。この物質は猫以外の動物の虫除けにも活用できます。
このように普段の生活で素朴な疑問を持ち、仮説を実験によって立証していくことは、人間に有用な物質の発見にもつながっていきます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
岩手大学 農学部 応用生物化学科(令和7年度から農学部 生命科学科 分子生命医科学コース所属) 教授 宮崎 雅雄 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
生物化学、生物学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?