どこから来たの? 遺伝子解析でニワトリの系統を探れ!

どこから来たの? 遺伝子解析でニワトリの系統を探れ!

ニワトリの歴史は人の歴史

家畜のニワトリの祖先は、東南アジアの熱帯雨林に生息するセキショクヤケイです。これが世界中に波及した原因のひとつは、運搬しやすいサイズにあります。
数千年前、オーストロネシア語族と呼ばれる人々が、インドネシアから小さないかだで海にこぎ出し、太平洋の島々に渡りました。その際、ニワトリもいかだに載せて連れて行ったと考えられます。ニワトリのルーツを遺伝子解析で調べた結果、太平洋の島々で飼われているニワトリの系統関係は、オーストロネシア人がたどったとされる移動経路とよく一致することがわかってきました。

日本のニワトリはどこ由来?

日本にニワトリが伝来したのは弥生時代から古墳時代だと考えられています。「古事記」には、天岩戸に隠れた天照大神を引き出すためにニワトリが鳴くシーンが記されています。
ニワトリのミトコンドリアDNAの一部を解析した結果、日本のニワトリは太平洋のもののミトコンドリアと同じタイプを持つものが多かったため、航海能力の高いオーストロネシア人が日本にも持ち込んだと考えられていました。しかしミトコンドリアの全DNAを調べた最近の研究により、日本と太平洋のニワトリに共通すると思われたミトコンドリアのタイプはさらに細かく分類され、日本のニワトリは太平洋ではなく中国北部のものと近縁であることがわかりました。

闘うニワトリのルーツとは

闘鶏の軍鶏(しゃも)も、これまでは江戸時代にタイから伝わったとされていましたが、遺伝子解析から中国北部が由来であることがわかりました。平安時代の終わりから鎌倉時代のはじめに描かれた「鳥獣戯画」に軍鶏にそっくりな鳥が描かれており、かなり古い時代に伝わってきたと考えられます。
大陸から孤立したマダガスカル島では、どのニワトリも闘うニワトリに特徴的な直立した姿勢をしています。なぜマダガスカルのニワトリはみな直立しているのか、日本の軍鶏と世界の闘鶏の品種とはどのような関係にあるのか、調査が進められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

広島大学 生物生産学部 生物生産学科 教授 米澤 隆弘 先生

広島大学 生物生産学部 生物生産学科 教授 米澤 隆弘 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

遺伝学、進化学、畜産学、考古学、地理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

大学では、まだ誰も知らないことを解き明かし、新しい知識を築いていきます。高校までの勉強では、すでにある答えが教科書に書かれていますが、大学はその教科書に新しい記述を付け足していく場所なのです。そのため、間違いに気づいたり、知識が更新されたりすることも珍しくありません。また、例えばニワトリの起源を探るにしても、遺伝子解析だけでなく遺跡調査や文献調査などさまざまなアプローチが可能です。大学にはさまざまな専門家がいるので、その環境を生かし、ぜひ学際的な視点を養ってほしいです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

広島大学に関心を持ったあなたは

広島大学は社会に貢献できる優れた人材を育成し、科学の進歩・発展に貢献しつつ、世界の教育・研究拠点を目指す大学です。緑豊かな252ヘクタールという広大な東広島キャンパスを抱え、また、国際平和文化都市である広島市内等のキャンパスを含め、12学部、4研究科、1研究所、大学病院並びに11もの附属学校園を有しています。 新しい知を創造しつつ、豊かな人間性を培い、絶えざる自己変革に努め、国際平和のために、地域社会、国際社会と連携して、社会に貢献できる人材の育成のために発展を続けます。