青果物の-5℃保存で、世界の食料問題を解決せよ!
日持ちしにくい青果物は廃棄も多い
冷凍技術の発達で、さまざまな食品の長期保存が可能になりました。ただし、水分を多く含む野菜やフルーツは凍結し解凍すると鮮度や食感が損なわれるため、4~5℃の冷蔵で保存・流通するのが一般的です。冷凍に比べ日持ちする期間は限られ、その間に消費しきれず捨てられてしまうことは少なくありません。世界では食料生産量の約3分の1が毎年廃棄されており、食品ロスの削減は重要な課題です。その糸口として、青果物を凍らせずに、鮮度や品質を保ったまま長期保存する過冷却保存技術の開発に取り組んでいます。
長期保存のポイントは-5℃
生鮮食品を超長期保存するには、食品に含まれる微生物や酵素の働きを抑制し、分解や腐敗を防ぐことが必要です。そのためには低温での保存が必要なのですが、これまで青果物を氷点下で保存した例はありませんでした。ここでは、カット野菜やカットフルーツを5℃、0℃、-5℃で保存し品質・生菌数の変化を調べたところ、-5℃で青果物を過冷却させることで①長期間保存しても凍らないこと、②腐敗菌が増殖しないこと、③鮮度や品質も購入時とほぼ変わらず保持されること、が明らかになりました。現在は、カットしない果実に対しても同じような測定をし、良い結果が得られています。
省エネで食品ロス削減に貢献
一般的に、温度を10℃下げると青果物の呼吸量は3分の1程度減少し、日持ちは3倍長くなると言われています。ですから温度差だけをみれば、4~5℃の冷蔵保存より-5℃で保存すれば、その3倍は長く保存できることになります。さらに凍らず腐敗しないことも加味すれば、青果物の-5℃保存は1カ月から半年、あるいは1年の超長期保存も夢ではありません。また冷凍に比べ消費エネルギーも少なくて済みます。省エネで鮮度や品質を長く保てれば、農家が自ら出荷を調整し、余剰分を計画的に消費者に届けることも可能です。それは食品ロスの削減になり、世界の食料問題を救うことにもつながります。
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 農学部 食料生産環境学科(令和7年度から農学部 地域環境科学科 革新農業コース所属) 教授 小出 章二 先生
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