太古の地球環境と生命の謎を、温泉から探ってみよう
温泉は太古の地球?
日本全国にある温泉を観察すると、炭酸カルシウムや鉄が堆積している場合があります。それらの形成環境は数十億年前の地球環境に似ていると考えられています。地球にある岩石は、火成岩・変成岩・堆積岩の3種類に分かれますが、中でも堆積岩は砂や泥、生物の遺骸などが積もってかたまったもので、それは形成された時代の気候、温度、酸素量、どんな生物が存在したかといったことを示す貴重な情報源です。温泉の堆積物もまた、太古の地球に似た「生きた化石」と言えるわけです。
微生物が地球を激変させた
肉眼でも見える大きな生物がたくさん登場するのは5億4100万年前のカンブリア紀以降です。原始生命が生まれたのは40億年前頃で、30億年前頃に光合成をして酸素を放出するシアノバクテリアが誕生したことから、地球環境は劇的に変化します。そんなシアノバクテリアによって作りだされた構造体がストロマトライトという縞(しま)模様の岩石で、これを調べれば太古の時代に起きたことの手がかりが得られるのです。
そのひとつがこれまで3回起きた地球の「全球凍結」です。赤道付近も含め、地球が完全に氷に覆われた状態になりました。微生物であるシアノバクテリアが温室効果ガスであるメタンを酸化させた結果、温室効果が弱まって地球が寒冷化し、凍結に至ったとする説があるのです。
太古の地球環境と生命の謎を解く
しかし、微生物がどのように生まれたのかはほとんどわかっていません。先ほどのストロマトライトも、シアノバクテリアの出現よりも古い場合があり、どうやって形成されたのかはわかっていません。そもそも微生物の痕跡は小さすぎて調査が非常に困難です。そこで太古の地球と似たような場所を調べる必要があり、それが温泉なのです。化石から得られる情報には、欠落している部分がたくさんあります。その欠落を温泉の堆積物によって補うことができれば、地球環境と生物がどのように影響を与え合ってきたかを解明できるはずです。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 理学部 地球惑星システム学科 准教授 白石 史人 先生
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