動物から人に感染する病気を防ぐには? 先回り戦略で健康を守る
人獣共通感染症はなぜ増えた?
微生物の中には、自然宿主(しぜんしゅくしゅ)と呼ばれる動物にひっそりと存在していたのに、人や他の動物の体に入ると病気を起こすものがいます。例えば新型コロナウイルス、インフルエンザウイルスやエボラウイルスなどによる感染症です。これを「人獣共通感染症」といい、WHOが確認しているだけでも200種類以上存在します。自然宿主の大部分は野生動物です。世界中で進む都市開発や交通網の発達、地球温暖化などの影響で自然界と人間社会との境界が失われ、人間が野生動物に接してしまうことで、新たな感染症が発生する機会が増えたのです。また、病原体を媒介する蚊などの節足動物の生息域が広がることで、デング熱などの感染症が増加しています。
感染症を抑えるための先回り戦略
人獣共通感染症を引き起こすウイルスは人類にとって脅威ですが、元来自然界の生物に存在するものであり、根絶は困難です。そこで病気の発生を予測して予防する「先回り戦略」を確立しようと、医学や獣医学、情報科学などの専門家が協力して研究を行っています。
その研究は大きく分けて3つあり、1つ目は病原体の由来を突き止める研究です。自然宿主となる野生動物を見つけ、ウイルスの存続メカニズムを調査すれば、生息地域での予防対策や、素早い診断が可能になります。2つ目は感染症を引き起こすメカニズムの研究です。病気を起こす仕組みなどウイルスの特性を探ります。3つ目は診断、予防、治療方法の研究です。遠隔地でも実施出来る簡便な診断方法、ワクチンや治療薬が開発されれば、世界中の人々に安心を届けることができます。
ウイルスでウイルスを制する
ウイルスはすべてが病気を引き起こすわけではありません。病原体となるウイルスによく似た近縁のウイルスでも、人に感染しないものがいます。そこで人に感染しないウイルスの利用方法を探る新たな研究も始まりました。蚊に共存させることで病原体を運び難くしたり、ワクチンの材料への応用も期待できます。
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先生情報 / 大学情報
北海道大学 人獣共通感染症国際共同研究所 分子病態・診断部門 准教授 大場 靖子 先生
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