栄養が少なくても自給自足?! 海に生きる微細藻類
海の環境を伝える微細藻類
海には微細藻類(びさいそうるい)と呼ばれる、肉眼では見えない単細胞性の藻類がいます。栄養の豊富な内湾では細胞のサイズが大きく、栄養の少ない外洋に行くにつれサイズが小さくなる傾向が見られます。微細藻類が生きるうえで必要な栄養は、窒素、リン、ケイ素などです。黒潮周辺にはそれらの栄養がほとんどないため、微細藻類が少ない海域だといわれてきました。しかし、調査をしてみたところ、ピコ(10⁻¹²)・ナノ(10⁻⁹)サイズの微細藻類が大量に生息していることがわかりました。西部北太平洋の熱帯・亜熱帯域は沿岸域に比べて栄養がたいへん少ないので、微細藻類は細胞を小型化し栄養を吸収しやすくしていると考えられています。
栄養が少なくても自給自足?!
外洋域に分布する微細藻類のなかには、窒素固定(空気中から窒素をつくること)ができるシアノバクテリアを細胞内に共生させているものもいます。同じ種類でも、栄養の多い海域にいる微細藻類は体内に葉緑体が充満しており、シアノバクテリアの姿は見えません。微細藻類がシアノバクテリアを利用する仕組みはまだまだナゾに満ちています。
小さくても地球を支える力持ち
微細藻類は小さな生き物ですが、食物連鎖の原点として、また酸素を作る生き物として、地球上の生物を支えています。環境が変わり微細藻類のサイズや数が変化すると、動物プランクトンや大型の魚類に影響を及ぼすと懸念されます。円石藻(えんせきそう)という微細藻類は炭酸カルシウムの鱗片を身にまとっていますが、地球温暖化にともなう海洋酸性化が進むと生息域に影響を及ぼすことも考えられます。微細藻類は膨大な数が存在しているので、種類や生息地、生態など未解明のナゾだらけです。未来の生態系や環境を守っていくためにも、微細藻類の研究が求められています。
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東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋環境科学科 助教 宮崎 奈穂 先生
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