人はなぜ墓を建てるのだろう? 悪業を消す功徳
「ちょい悪」人間がするべきポイ活とは?
人間は誰でも、他人の悪口を言ったり嫉妬したりします。大半の人間は犯罪をしないまでも、完璧な善人ではなく「ちょい悪」なのです。そのような人間が積んだ悪行を帳消しにするために、仏教では善い行いをして「功徳」を積むことを勧めています。例えるなら、銀行口座の貯金や販売店のポイントのように、功徳をためていくイメージです。功徳を積むには、他者を助けたり、写経をしたり、魚を買ってきて自然に放す「放生」をしたり、さまざまな手段があります。
墓のルーツは、五重塔だった?
墓を建てることも、功徳を積む手段の1つです。日本では、鎌倉時代以前は多くの人に墓はなく、死者を山や川に置き去りにしていました。それが鎌倉時代になると仏教が民衆化し、死者を弔う思想や供養の儀礼が広まりました。死者を弔うために建てる墓のルーツは、有名な寺に建っている五重塔などの仏塔です。仏塔は、「ここに仏の教えがあります」という目印・ランドマークでもあり、仏塔を建てることは功徳を積むことになり、その功徳は死者に振り向けることができると考えられました。死者に功徳を積む意味で建てた仏塔が、やがて小型化して石碑になり、現在の墓の形になったのです。
多様化する墓のかたちと弔い方
よく墓には、「○○家先祖代々の墓」と刻んでありますが、これは明治時代に始まったスタイルです。墓は江戸時代までは個人や夫婦単位で建てるものでしたが、明治政府が「先祖を敬い、神を尊ぶことは日本人の道徳の基本」と指導したことで、先祖供養の考え方や「先祖代々墓」が普及しました。
しかし、現代では核家族化・少子化・価値観の変化で、墓や弔い方法が大きく変わりつつあります。墓石を建てずに庭園に埋葬する樹木葬、海に遺灰をまく海洋散骨葬、遺灰をロケットで飛ばす宇宙葬、ペットと一緒に埋葬するペット墓など、弔いに対する多様な考え方をそこに見ることができます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。