ロマンあふれる考古学と青銅器の世界

古代の最先端技術だった青銅器
青銅器とは、銅とスズの合金で作られた工芸品です。中国では紀元前15世紀頃に成立した殷王朝と、続く周の時代に大きく発展しました。古代中国の青銅器はその形に独特の特徴があり、表面には動物などを描いた複雑怪奇な装飾模様や、「金文」と呼ばれる文字などが記されています。
自然界には存在しない青銅作りには、当時の国家クラスの最先端技術が注ぎ込まれていました。それ故に、青銅器が出土するのは一握りのお墓に限られ、青銅器は祭祀(さいし)用の器として使われていたとされています。
青銅器からわかる権力の実態
各地に出土する青銅器を調査することで、当時の中国社会の様子や国家成立のプロセスが明らかになってきました。中国には『史記』をはじめさまざまな歴史書が残されており、それらの文献では周王朝は強力な国家だったとみなされています。ところが青銅器の生産と流通の観点からみると、実際の周はそれほど強力ではなく、今の陝西(せんせい)省を拠点とする一勢力にすぎなかったという事実が浮かび上がります。王の権力を示す指標として青銅器を使った祭祀がありますが、実はこの祭祀が各地では周の指示通りには行われていませんでした。ここからも周による統一的な王朝があったわけではなく、さまざまな勢力が半ば独立した形で併存していた状況がうかがえます。
古代人との時を超えた対話
考古学とは、発掘された遺跡や遺物を通じて歴史や過去の人間の営みを明らかにする学問です。考古学研究の本質は、何よりも発掘現場にあります。地面を掘ると、今まで誰も見たことがなかった品々が現れます。かつて、その品と一緒に生きていた当時の人を除けば、考古学者は世界で初めてそれを目にして手で触れた人間になるのです。調査を通じてさまざまなものを発掘し、出土した物品の役割や、過去の暮らしの推測をする考古学は、研究を通じて昔の人々と時を超えた対話をするのです。
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駒澤大学文学部 歴史学科 考古学専攻 准教授角道 亮介 先生
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