日本や中国の文化・思想の根っこに仏教あり!

日本や中国の文化・思想の根っこに仏教あり!

インドから中国、日本へ

インドで成立した仏教は、その後何世紀もかけて中国、そして日本へと伝来しました。その間に、教義や経典は少しずつ変化しています。
例えば、インドで坐禅は仏教の成立以前から行われていて、お坊さんたちは経典の中に詳しい説明がなくてもあの独特な座り方で修行をしていました。一方、仏教が渡った頃の中国には、坐禅のような足を組む習慣がありません。そのため、中国では具体的な体の動きを説いた経典が編集され、流布しました。そして、6世紀に登場した智顗(ちぎ)という人は、さらに詳しく作法をまとめ、これが今日でも行われている坐禅マニュアルの元祖となりました。

変化しながら広まる仏教

智顗の説いた修行の理論は、「止観(しかん)」という言葉で代表されます。心を一つの対象に集中させる「止」、物事を正しく見極める智慧によって対象をみる「観」は、インド仏教でも説かれていましたが、智顗はこの二つの実践を深く解き明かすことで、東アジアを代表する思想を作り上げました。
その影響は、実はわたしたちの身近なところにも及んでいます。例えば近年、日本でも注目されるアメリカ発祥の「マインドフルネス」です。これは瞑想などを用いた一種のストレス軽減法ですが、インド以来の止と観の実践をベースにしたものです。

日本人の心のふるさとへ

さて、智顗の教えは、9世紀の初めに最澄によって日本に伝えられ、「天台宗」と称して今も伝統を保っています。その思想の中心をなす経典が「法華経」です。「源氏物語」などの平安時代の文学には、たびたび法華経など仏教思想を踏まえた表現が出てきます。平安貴族にとって、お経の言葉は一般常識のように身近なものであったのです。そして現代の日本語でも、あなたが思っている以上に多くの仏教語が使われています。
インドで生まれた仏教は、中国でのアレンジを経て、長い年月をかけて日本の精神文化に根を張っていきました。その教えの変化を学ぶことは、日本人のこころのふるさとを探す旅なのかもしれません。

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先生情報 / 大学情報

駒澤大学 仏教学部 仏教学科 教授 山口 弘江 先生

駒澤大学 仏教学部 仏教学科 教授 山口 弘江 先生

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中国仏教(天台学)

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メッセージ

仏教の教えに出てくる「諸行無常」という言葉は、「この世の現象はすべて変化するものである」という意味です。現代社会はあらゆる変化が早く、対応していくのが大変だと感じるかもしれませんが、そもそも絶対的な真理は簡単にわかるものではありません。日々の小さなことに一喜一憂せずに、柔軟に生きていくことこそが大切なのではないでしょうか。大学とは、知識や技術を身につけるだけの場所ではありません。さまざまな価値観に出会い新たな経験をすることで、柔軟な思考力を身につけるところだと考えてください。

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駒澤大学は、2022年で開校140周年を迎えました。その豊かな伝統を守りながら、時代の状況に即した改革を行い、7学部17学科を擁する総合大学となりました。本学の特徴は、緑ゆたかで広大な駒沢オリンピック公園に隣接する閑静な環境にあり、全学部の学生が4年間を、ひとつのキャンパスで学習していることです。そのため、学部の垣根を越えて、充実した教育システムが用意されています。そして、近年の就職不況のなかにあっても、毎年高い就職率を誇っています。