正解は一つじゃない! 「その人らしい生活」を支えるには
日常生活の中にある相談の場面
困りごとを抱えた人の相談と言えば、面談室で専門職員が話を聞くといった場面を想像するかもしれません。しかし実際にはそれだけではありません。例えば障害者の生活の場であるグループホームでは、世話人としてソーシャルワーカーが、「日常生活の中で」さまざまな相談支援を行っています。散歩をしたり、食事をしたり、スポーツ観戦をしたり、一見誰にでもできそうな日常活動を一緒にする中で関係を築きながら、その人の希望や「こうありたい」といった目標を聞き取り、一緒に考えているのです。支援者の「専門性」は一緒にする日常活動の表にはほとんど出ませんが、その中に現れていることがわかってきました。
めざすのは「平均的な幸せ」ではない
ソーシャルワーカーという専門職は、支援を必要とする人とまず関係性を作り、本人がどういう生活を望んで、どういう風に決めていくかいうことを支えます。そこでめざすのは、社会の中で認識されている「平均的な幸せ」に近づくことではありません。「その人にとっての幸せって何だろう」ということを考えながら、共に創り出していくのです。もちろん正解は一つではなく、「こうでなくでは」といった制約もありません。その人の好きなことに寄り添い、豊かな発想を持つことでさまざまなやり方や選択肢を考えることができます。
「日常を重視する支援」はヨーロッパでも
関係性を大切にしながら、日常活動の中での支援が実践されているのは日本だけではありません。ヨーロッパには「ソーシャルペダゴジー」という理論があります。日本ではあまり紹介されていませんが、「人は本来たくさんの可能性を持っている、だから自分のことは自分で考えて決められる」といった基本的な考え方は同じです。福祉だけでなく教育の視点でも、日常生活の中で一緒に考えるという機会を大切にしており、日本の実践と共通性があります。今後は、海外の実践ともリンクしながら、その専門性がさらに明らかになっていくでしょう。
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先生情報 / 大学情報
駒澤大学 文学部 社会学科・社会福祉学専攻 准教授 鬼塚 香 先生
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