どの言語も省エネ指向で変化する

どの言語も省エネ指向で変化する

つづり通りに読まない

日本語にも英語にも、つづりと読み方が一致しない言葉があります。例えば、日本の人名の五右衛門は、2番目の右の字を発音せずに「ごえもん」と読みます。英語のナイフのつづりはknifeであり、初めのkは発音しません。語学学習者を悩ませるこれらの現象は、どうして起こるのでしょうか。

言葉の地位

言葉は変化していくものであり、すべての言語に共通する変化の方向が「省エネ」です。口を大きく動かすような音や、単語の前と後ろの音が発音されなくなっていきます。かつては五右衛門を「ごうえもん」と読み、knifeのkも発音していたように、言葉ができた当初はつづりと読み方が一致していました。しかし、省エネ化によって、これらの音が消えていき、いつしか省エネ化された言葉の方が正式になったのです。
一方で、省エネは楽をすることでもあるので、言葉の地位が下がってしまうこともあります。例えば「おまえ」は、地位を自分より同等か下に見ている人に対して用いる二人称の代名詞です。語源は御前であり、「おんまえ」とも「ごぜん」とも読めますが、どちらも目上の人に敬意を表して使う言葉です。省エネで短くなることによって、言葉が軽くなり、おのずと使う場面が変わっていったと考えられます。

敬語を理解する

この省エネと地位の関係を敬語に当てはめると、ややこしい敬語の使い方が理解しやすくなります。例えば、「食べる」を敬語にする際には、語尾に「れる・られる」をつけて「食べられる」とするのが一番簡単です。一方、「お食べになる」は、頭と語尾の両方を変えなければならず、より手間がかかります。さらに「召し上がる」は、まったく別の言葉に置き換えなければなりません。つまり、省エネで変換できる「食べられる」よりも、一番面倒な「召し上がる」の方が、敬意が高い表現になるのです。
どんな言葉も古くから変化し続けており、その変化に隠れた共通の法則を見いだすことは、言葉の一層の理解につながります。

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関西国際大学 国際コミュニケーション学部  教授 伊藤 創 先生

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言語学

メッセージ

国語はあまり好きじゃないけど、外国語でのコミュニケーションには興味がある、と考えているあなた、日本語をきちんと知ることは、英語や他の外国語の習得にとても役立ちます。裏を返せば、日本語の構造を理解できていないと、他の言語の文法の理解も深まりません。また、言語を学ぶことは、外国人とコミュニケーションができるだけなく、その国の歴史や文化も深く知ることになります。点を線へ、そして面に、世界が広がっていく、その最初の点が語学です。日本語の理解を深め、もっと広い世界に興味を伸ばしていってほしいです。

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