フェスが開催しにくい世の中で、改めて考える「フェス」とは
「フェス」に何を求めているのか
音楽フェスにおける調査は、フェスが行われている会場に足を運び、観客の様子や空気感を味わうことから始まります。ライブの合間に人に話しかけ、後日連絡してヒアリングを行い、「会場でどんなことをするのか」や「何を求めてフェスに行くのか」ということをじっくり聞きます。観客に向けた調査を行うと、個々のライブを一生懸命観ている人は意外に少なく、イベントそのものを楽しんでいる人や「あのライブ面白かったね」と友人と感想を言い合う「コミュニケーション」を重視している人が多いということがわかりました。中には、数十組分のライブをすべて観ようと試みた人もいましたが、「全然面白くなかった、何をしているんだろうという気持ちになった。やはりフェスは誰かとの会話なども含めて大事」と振り返っていました。
「それぞれ楽しむ」から「みんなで楽しむ」へ
フェスは「人々が集まること」自体に価値が生まれ、そこから「自分たちのお祭りが始まるんだ」という高揚感が高まっていくのでしょう。フェスができたばかりの頃は、たくさんあるライブや会場の中から好きなものを選び好きなように観る、「みんなでいるけどバラバラに楽しむ」というスタイルが主流でした。しかし、最近はおそろいのフェス用シャツを着て決まった振り付けのダンスを踊るなど、「みんなで楽しもう」というモードになっているように見受けられます。
「なぜフェスに行くのか」を考え直す
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、多くのフェスが中止となり、開催できても「声を出せない」や「距離を取る」など厳しい制限が設けられました。この状況では、開催する側も参加する側もフェスに真剣に向き合わざるをえません。「なぜここでライブをやっているんだろう」「これまで通りのフェスではないのに、なぜ参加しているのだろう」という疑問を通して、「フェスとは」や「音楽とは」という、これまで考えもしなかったテーマを突き付けられます。
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先生情報 / 大学情報
関西国際大学 社会学部 社会学科 准教授 永井 純一 先生
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