幼稚園での指導とのギャップが小学1年生の壁になる
想像力を養う読み聞かせ
『おおきなかぶ』の絵本は、幼児期の教材として幅広く取り入れられているものです。しかし、幼稚園・保育園と小学校での取り組みを比べると、同じ教材ですが指導方法には違いが見られます。
幼稚園・保育園では多くの場合、子どもたちは先生の前に集まって座った状態で、先生が絵本を見せながら読み聞かせをします。周囲の子と肩が触れ合うような距離感で「うんとこしょ、どっこいしょ」と声を合わせて体を動かしながら聞いています。想像を膨らませながら物語を友だちや先生と楽しむことが、幼稚園教育要領や保育所保育指針では一番のねらいになっています。
文章を読むのは大変なこと
それに対し、小学校の伝統的なスタイルでは先生が教壇に立ち、児童一人ひとりが距離を保った席に座り、45分先生の話を集中して聞くことを求められます。言葉を覚えたての時期は「りんご」という単語を見て「り」「ん」「ご」と一音ずつ発音し、読み終わった後に自分が発した音が「りんご」とつながり、意味を理解します。そのため、小学校1年生の教科書は文節ごとに空白をいれて表記する「分かち書き」で書かれています。言葉のまとまりが視覚的にわかり、文章の意味をつかみやすくするためです。
また、物語の内容を理解しやすくするため、授業の最初に先生が話を一通り読んで聞かせることもあります。それでも、先生から指示されたページを開き、一人で文字を読んで物語を理解するのは、小学校1年生には高いハードルです。
「小1プロブレム」を解決するために
こういった幼稚園・保育園の指導とのギャップを子どもたちは敏感に感じ取っています。小学校に入学した子どもが新しい環境になじめない状態が続く「小1プロブレム」という問題も起きています。学校や幼稚園・保育園、家庭、地域環境などそれぞれに要因があると考えられますが、文部科学省では子どもたちが入学時から楽しく、充実した学習ができるように「スタートカリキュラム」の導入を進めています。
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先生情報 / 大学情報
國學院大學 人間開発学部 子ども支援学科 准教授 吉永 安里 先生
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