講義No.09640 教育 児童学

幼稚園での指導とのギャップが小学1年生の壁になる

幼稚園での指導とのギャップが小学1年生の壁になる

想像力を養う読み聞かせ

『おおきなかぶ』の絵本は、幼児期の教材として幅広く取り入れられているものです。しかし、幼稚園・保育園と小学校での取り組みを比べると、同じ教材ですが指導方法には違いが見られます。
幼稚園・保育園では多くの場合、子どもたちは先生の前に集まって座った状態で、先生が絵本を見せながら読み聞かせをします。周囲の子と肩が触れ合うような距離感で「うんとこしょ、どっこいしょ」と声を合わせて体を動かしながら聞いています。想像を膨らませながら物語を友だちや先生と楽しむことが、幼稚園教育要領や保育所保育指針では一番のねらいになっています。

文章を読むのは大変なこと

それに対し、小学校の伝統的なスタイルでは先生が教壇に立ち、児童一人ひとりが距離を保った席に座り、45分先生の話を集中して聞くことを求められます。言葉を覚えたての時期は「りんご」という単語を見て「り」「ん」「ご」と一音ずつ発音し、読み終わった後に自分が発した音が「りんご」とつながり、意味を理解します。そのため、小学校1年生の教科書は文節ごとに空白をいれて表記する「分かち書き」で書かれています。言葉のまとまりが視覚的にわかり、文章の意味をつかみやすくするためです。
また、物語の内容を理解しやすくするため、授業の最初に先生が話を一通り読んで聞かせることもあります。それでも、先生から指示されたページを開き、一人で文字を読んで物語を理解するのは、小学校1年生には高いハードルです。

「小1プロブレム」を解決するために

こういった幼稚園・保育園の指導とのギャップを子どもたちは敏感に感じ取っています。小学校に入学した子どもが新しい環境になじめない状態が続く「小1プロブレム」という問題も起きています。学校や幼稚園・保育園、家庭、地域環境などそれぞれに要因があると考えられますが、文部科学省では子どもたちが入学時から楽しく、充実した学習ができるように「スタートカリキュラム」の導入を進めています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

國學院大學 人間開発学部 子ども支援学科 准教授 吉永 安里 先生

國學院大學 人間開発学部 子ども支援学科 准教授 吉永 安里 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

幼児教育学、国語教育学

メッセージ

私は大学時代に心理学を勉強し、幼稚園、小学校と勤めた後に、今は大学で子どもたちの言葉の育ちと国語の指導について研究をしています。高校時代、大学ではこんなことを勉強したいなと思っていたことも、大人になるとさらに興味が広がっていき、また、進む道について迷うこともあるでしょう。でも、人生は必ず自分のめざすところに進んでいくものです。
そのためには、今いる場所で一生懸命に学んで生きることが大切です。人生は一生学びです。ぜひあなたも、國學院大學人間開発学部子ども支援学科で一緒に学んでみませんか。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

國學院大學に関心を持ったあなたは

140年以上にわたって、日本に関する教育研究を推進してきた國學院大學は、物事の本質を問い直す学びを大切にしてきました。6学部13学科を擁する現在は、未来の共生社会を創り出す人材の育成を目標に、各学問の立場から日本と世界への理解を深める学びを提供しています。既存の知を熟考し、新たな「知の創造」に挑む本学での4年間は、自身の自己実現や卒業後のキャリアで求められる人間力を涵養するための第一歩となるはずです。